今日すぐできる「ヤバい」だけからの卒業! SNSでも差がつく「おいしい」食レポ文章術

暮らし

公開日:2023/6/7

おいしい味の表現術
おいしい味の表現術』(瀬戸賢一:編集、味ことば研究ラボラトリー:著/集英社インターナショナル)

 言葉で思いを表現するのは難しい。なかでも、自身の感覚による「味」の表現は、その筆頭だ。「うまい」「おいしい」「ヤバい」と伝えるのはたやすいが、相手に対して「より真に迫る伝え方をしたい」となると、自分の語彙のなさを嘆きたくなってしまう。

 昨今では、SNSでも多くの人が食レポをする時代でもある。自分の食べた料理のおいしさを、より強く訴えかける言葉はないか。その疑問が浮かんだとき、ふと手にした本が『おいしい味の表現術』(瀬戸賢一:編集、味ことば研究ラボラトリー:著/集英社インターナショナル)である。

 本書は食いしん坊の言語学者たちが、おいしさを表現するフレーズについてロジカルに、事細かに解説した1冊だ。これを読めば「うまい」「おいしい」「ヤバい」を封印して、一歩先の食レポを実践できるようになる。

advertisement

カレーやシチューの「コク」に使える幅広い表現

 本書から感じられたのは、おいしさを表現するフレーズは“いつ、どの場面で使うか”がカギになるということだった。例えば、カレーやシチューなどのおいしさを表現する際に使われる「コク」にも定義があり、使うべき場面があると気がつく。

 本書では書籍『コクと旨味の秘密』(伏木亨/新潮社)から引用し、コクは科学的に「甘み+旨味+油脂が中核をなし、それに空間的な広がりと時間的な経過が深く関わる」と分析されている。

 ただ、コクが「ある」とはよく聞くが、実際に姿形があるわけではなく、調理を通して「ない」から「ある」へと状態が変化する。そのため一歩踏み込んだ表現をしたい場合には「出る」「深まる」「強まる」などのフレーズを組み合わせると、食べ物の味をより立体的に伝えることができる。

どこかで聞いたフレーズから一歩進んだラーメンの説明

 国民食と言ってもよいラーメンは、誰にとっても親しみのある料理だ。ただ、味をより深く伝えるとなると難しく、「コシのある麺」「やみつきになるスープ」といった、どこかで聞いたようなフレーズが真っ先に浮かんでしまう。

 さらにもう一歩踏み込んだ表現はできないか。例えば、「人間になぞらえる」表現は、ひとつの方法だ。

 本書にある「紳士的なにぼしラーメン」や「食べ手を選ばない一杯」はまさしく、人間になぞらえた表現で「何それ?」と興味をそそられる。また、動物にたとえた「ケモノ感あるスープとバキバキした麺」なども、言葉の力強さもあいまって関心を寄せてしまう。

 本書では、これらの他にもグルメ漫画における味覚の表現や、ラーメンと並ぶ国民食・カレーのおいしさの表現など、多岐にわたるテーマを扱っている。今日食べた料理を、SNSでより強くアピールしたいと考える人に、おすすめの1冊だ。

文=カネコシュウヘイ

あわせて読みたい