91歳現役心療内科医が提案する楽に生きるコツ。失敗も過去の栄光もほどよく忘れること

文芸・カルチャー

更新日:2023/6/29

ほどよく忘れて生きていく
ほどよく忘れて生きていく』(藤井英子/サンマーク出版)

 職場や学校での人間関係に悩んだり、家族のことで悩んだり。はたまた「なんであんなことしたんだろう」と過去の自分の行いを思い出しては後悔したり……。大小あれど、人間生きていれば悩みのひとつやふたつあるものです。そんな日々のモヤモヤから眠れないほどのストレスまで、あらゆる問題に共通する解決法として“忘れること”を提案するのが『ほどよく忘れて生きていく』(藤井英子/サンマーク出版)です。著者・藤井英子さんは、京都に自身の医院を持つ漢方心療内科医。91歳の今も現役で働いています。そんな藤井さんが本書を通して伝えたいのは、自分から目をそらさず、自分を一番大切にすること。そしてそのために「忘れていいこと」と「心に留めておきたいこと」を提案してくれるのが本書なのです。

自分を縛るものこそ忘れていい

 本書でまず言及するのは人間関係。嫌がらせをしてくる人や強い意見をぶつけてくる人、「ちょっと苦手だな」とこちらが思ってしまう人など状況は様々ですが、職場や学校などでの人間関係を引きずって、家に帰ってからも暗い気持ちになってしまう経験は多くの人にあることではないでしょうか? 本書ではそんな相手を忘れる、つまり心の距離を保つことをすすめます。人間関係とは相手の心もあることなので、こちらがいくら考えたところで状況が好転するとは限りません。「家に帰ったら考えない」「考えそうになったら他のことをする」と自分で線引きした方が、人生は明るくなると本書は伝えます。他にも「親だから」「仕事だから」「今までこうしていたから」などなど、気づかないうちに自分を縛っていた枷がいくつもあること、その枷を外すのは意外と難しいことではないということに気が付きます。

過去に囚われず、未来を生きる

 自分を大切にするためにもう一つ重要なのは、過去にしがみつかないこと。悲しい過去を思い出さないようにするのはもちろん、過去の栄光も大切にしすぎず、今と未来に目を向けた方が人生は楽しくなります。「良かった過去」も「失敗」も「経験」もほどよく忘れること。そしていくつになってもやりたいことを持ち、勉強したり何かを経験したり。誰かと競争するのではなく、自分のためにとる行動が、たとえ小さなことでも人生を豊かにしてくれます。何をしたらいいかわからない、という時は子どもの頃に好きだったことを思い出してみるのも手。小さい頃夢中になっていたものが、忖度なく自分の好きなものだったりするものです。

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 本書はこれまで紹介した内容などを、71のトピックとして紹介。いずれも印象的な言葉とそれを解説する見開き2ページの文章で完結しているので読みやすく、その時気になった言葉だけを読むこともできます。またこれまで紹介した内容のほかに、「自分の『健康法』をつくる」や、「『小さな不調』に慣れない」など心身の健康を保つための方法を紹介したトピックも充実。91歳の現役医師である著者の言葉には強い説得力があります。

 これからの人生に悩んだ時や自分の健康に不安を感じた時など、時々読み返して人生の指針にしたい、そんな一冊です。

文=原智香

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