羊の使い魔と間違って人間の子どもを生み出した女。バリキャリ魔女がママになって奮闘する異世界育児マンガ

マンガ

公開日:2023/7/17

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌
魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌』(もくはち/少年画報社)

 育児の大変さや楽しさを伝える、良作コミックは多い。だが、『魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌』(もくはち/少年画報社)は、少し違った視点から育児の難しさや醍醐味を描いた漫画だ。

 本作は、なんと魔女のママを主人公にした異世界育児物語。仕事と育児を両立させながら、夢を叶えようと奮闘するバリキャリ魔女の姿から、元気を貰える作品となっている。

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■人間を生成したバリキャリ魔女が仕事と育児の両立に励む!

 非常勤講師として働く魔女のセノビアには、大きな夢がある。それは父を超える魔法学者になることだ。夢を叶えるべく、セノビアは魔法の研究に励み、第一目標として教授の座に就くことを狙っていた。

 そんなある日、予期せぬ出来事が。羊の使い魔を生成しようとした際、材料を間違え、なんと人間の子どもを生成してしまったのだ。

 安月給で子どもを抱っこすらしたことがない自分に、育児なんて務まるのだろうか…。そう不安になるも、自分のことをママと呼び、甘える子どもの姿に胸キュン。

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

 セノビアは生成された子に「アザレア」という名前を贈り、魔法の勉強と育児を両立しようと奮闘し始める。

 しかし、子育ては思っていた以上に大変。セノビアは子育て本を片手に激闘を繰り広げ、アザレアにかかりっきりの状態に。それでもなんとか時間を作って研究を進め、昇格審査会へ提出する論文を完成させた。

 ところが、提出直前、アザレアが飲み物をこぼしてしまい、論文は文字が読めない状態になってしまう。落胆しつつ、アザレアを叱ったセノビアは育児の疲れもあったのか、意識を失ってしまった。

 そこへ偶然、現れたのが同じく教授の座を狙っているライバル。ライバルはアザレアに魔法をかけ、セノビアの論文を燃やそうとする。

 その後、アザレアの泣き声で意識を取り戻したセノビアは、絶体絶命の状況に置かれていることを理解。我が子と論文のどちらかを選ぶことを余儀なくされるが、セノビアはどちらも諦めない。アザレアの命を救った後、力を振り絞って論文も取り戻し、見事、教授の座に就くことができたのだ。

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

 教授になったセノビアは、ますます多忙に。育児の傍ら講義をし、行政官からの依頼を受けて魔法生物の捕獲を手伝うことも。本作は、そういったファンタジーな展開になった時にも独自の視点が光るため、面白い。

 例えば、グリフォンという魔法生物の子どもの捕獲を依頼された時のこと。麻酔薬を含んだエサを口にしないグリフォンの子どもを見て、セノビアは偏食になり始めたアザレアの姿が頭に浮かび、どうしたら食べてくれるのかと母親目線で試行錯誤する。

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

魔女のすくすく異世界育児 ~使い魔ちゃんとモフモフ魔法生物の育成日誌

 こんな風に、他のファンタジー作にはない視点で問題が解決していくので、普段あまりファンタジーコミックを手に取らない方でも、この世界観に入りやすいだろう。

 また、本作にはベッドに置いた瞬間に子どもが起きる謎現象や、だだをこねる子どもに振り回される大変さなど、子育てをする中でぶちあたる「あるあるな悩み」も丁寧に描かれているので、世のママはつい、自分の日常を重ねてしまうはず。

 私も我が子とバトルをしながら頑張っている…と思うからこそ、仕事と育児を両立させようと頑張るセノビアを、より応援したくなるのだ。

 なお、1巻のラストではアザレアが予期せぬ危機に巻き込まれてしまい、続きが待ち遠しくなる。何か不思議な能力も秘めていそうなアザレアは、一体どんな大人になるのだろうか。彼の成長も楽しみつつ、セノビアの夢が叶う日を見届けてほしい。

文=古川諭香

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