「ハガレン」荒川弘による話題の最新作!「ツガイ」という異形の能力を駆使した、伝奇バトルマンガ『黄泉のツガイ』

マンガ

公開日:2023/7/5

黄泉のツガイ
黄泉のツガイ』(荒川弘/スクウェア・エニックス)

『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)や『百姓貴族』(新書館)、『銀の匙 Silver Spoon』(小学館)など、数々のヒット作を持つ人気作家・荒川弘氏。『黄泉のツガイ』(スクウェア・エニックス)は、2022年に連載がスタートした直後からマンガ好きの間で大きな話題になっている荒川氏の最新作だ。「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」では第2位にランクインし、「次にくるマンガ大賞 2023」でもコミックス部門にノミネートされているというから、本作が次の大ヒットマンガの候補のひとつとされているのは間違いない。

 本作は文明から隔絶されたような山奥の村で育った少年・ユルが主人公だ。ユルは狩りの腕前が一級品で、野鳥を狩っては村人たちを喜ばせていた。そしてユルには双子の妹がいる。彼女の名はアサ。何故か村の奥にある牢獄の中で「お務め」を果たしていて、その姿はまるで「幽閉」されているようでもあった。この村には何かがある――。第一話の冒頭数ページから、読者の胸には違和感が広がっていくだろう。そして世界が一変する。小さな村を起点にした物語は、壮大な闘いへとつながっていくのだ。

黄泉のツガイ

黄泉のツガイ

 ユルをはじめ、本作にはさまざまな「ツガイ使い」という者たちが登場する。「ツガイ」とは幽霊、妖怪、化け物、UMA、異形などとも呼ばれる、一対の存在のこと。2体で1組となり、それぞれに特殊な能力を備えている。それを使役する者たちは「ツガイ使い」と呼ばれ、彼らがド派手なバトルを繰り広げていくのだ。思えば『鋼の錬金術師』でも「錬金術」をフックに魅力的なバトルを描いてみせた荒川氏。その手腕を本作でも存分に楽しむことができるだろう。ちなみにユルのツガイは「左右様」と呼ばれる鬼のような男女のペア。圧倒的なパワーを持ち、眼前の敵を木っ端微塵にしていく。

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黄泉のツガイ

黄泉のツガイ

 なるべくネタバレしない状態で読んでもらいたいため、どこまで解説していいものか非常に悩ましいが、ひとつだけ書いておく。物語の中で描かれるのは、生まれや血によって定められた運命だ。ユルのみならず、双子の妹・アサにもそれが課せられている。運命をただただ受け入れていくのか。しかしまるでその運命から抗うように闘うユルの姿からは、従うのではなく、自らの力で未来を切り拓いていこうとする強さが伝わってくる。それはマンガにおける純然たるヒーローの姿であり、読者を魅了し、牽引するパワーに満ちている。だからこそ本作は、開始早々に多くのファンを生み、「次にくるマンガ」の候補になっていると分かるはずだ。

黄泉のツガイ

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黄泉のツガイ

 複数の謎がちりばめられ、ひとつを回収したかと思えば、また次の謎が見えてくる。そのストーリーを追いかけることはすなわち、ユルとアサの生き方を見守ることでもある。ふたりが穏やかな暮らしに戻れるよう応援しながらも、「ツガイ」という不思議な能力による大迫力のバトルも目一杯楽しんでもらいたい。

文=イガラシダイ

©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX


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