高齢者に「ダウンロード」と「インストール」の違いを分かりやすく伝えるには? 若宮正子流デジタル活用術

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公開日:2023/7/15

88歳、しあわせデジタル生活――もっと仲良くなるヒント、教えます
88歳、しあわせデジタル生活――もっと仲良くなるヒント、教えます』(若宮正子/中央公論新社)

 世界最高齢プログラマーとして知られる、若宮正子さんが最新刊『88歳、しあわせデジタル生活――もっと仲良くなるヒント、教えます』(中央公論新社)を出版した。

 若宮さんは、定年退職を機に「58歳からパソコン」を習得、その後「81歳でプログラミングを習得」したという驚きの経歴を持つ。「人生で今日という日が一番若い」と述べる著者が、本書で伝えるのはシニア世代に向けたデジタル活用術だ。

 本稿を担当する筆者は、高齢の母からスマホの使い方をしょっちゅう電話相談されることに内心くたびれていたのだが、同じく“シニア世代”からの言葉が詰まった本書をプレゼントしようと決めた。

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「ダウンロード」と「インストール」の上手な説明

 著者の説明は、分かりやすく丁寧。デジタル機器に慣れているはずの世代としても、説明に窮する場面もあるが、思わず「なるほど」とうなずいてしまう。

 例えば、「ダウンロード」と「インストール」の違いを、親世代へ伝えるとなるとけっこう難しい。しかし、本書では前者が「電器屋さんで買った洗濯機が玄関に届くまでのこと」で、後者は洗濯機を「所定の場所に置き、電気コードをお宅のコンセントに差し込み給排水のホースにつないで使えるようにする」ことだと解説している。

 他にも事例は多々あり、筆者は実際「ログイン」といった言葉ですら、親への説明に四苦八苦した経験がある。本書では、サービス利用のため「家の玄関のように」「カギを開けて中に入る」ことだと説明しているのが分かりやすく、次に親へ説明する機会があるなら“使ってみたい”と感じられた。

 自分にとって慣れているものほど、知らない人に教えるのは苦労する。特に、親世代に対してと考えると、著者目線の解説は大きな手助けになる。

飲食店のタブレットにとまどう世代へのアドバイス

 筆者が両親と回転寿司へ行ったとき、テーブル上のタブレットを前にして“よく分からないから注文して”と、端末を託されたときがあった。内心“選んでタップするだけだろ…”と思ってしまったのだが、そんなささいなシチュエーションについても、著者は言及している。

 自身を「新しもの好き」と称する著者は、飲食店のタブレットにふれながら「あらどうやるのかしら」「合計金額もわかって便利ねえ」と楽しんでいるという。ただ、なかには「間違って注文したらどうしよう」「口で伝えたほうが早いのに」と心配になる人もいるかもしれないと、優しく寄り添う。

 ポジティブに「自分の好きなタイミングで注文できる方法」と捉える著者は、間違えてしまう不安を抱える読者に「最後に注文内容を確認するページが出て来るので、そこをしっかり見て確認」できると紹介する。加えて、スタッフの前で「一回自分で注文して、『これでいいのかしら?』と確かめると、早く覚えられるかもしれません」とアドバイスする。

 不安があったとしても「前向きな気分でトライしてみましょう」と明るく述べる著者の言葉には、きっと背中も押されるはずだ。

 本書ではこのほか、Excelやスマホ決済、Zoomなどもトピックで取り上げながら、著者の実体験をまじえたデジタル機器の活用術を多数紹介している。シニア世代への説明の仕方を学ぶためにも、役立つ一冊だ。

文=カネコシュウヘイ

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