お客様は動物、従業員は人間! 今秋アニメ映画化される、“百貨店のお仕事×かわいい動物”コミック

マンガ

公開日:2023/7/30

北極百貨店のコンシェルジュさん  (ビッグコミックススペシャル)
北極百貨店のコンシェルジュさん(ビッグコミックススペシャル)』(西村ツチカ/小学館)

 日本には世界に誇れる文化がある。その一つが「擬人化文化」である。八百万の神が信じられてきた歴史が、その根底にある、などといわれる。

 本書『北極百貨店のコンシェルジュさん (ビッグコミックススペシャル)(西村ツチカ/小学館)は、「北極百貨店」という百貨店が舞台となる1話完結の物語群だ。この百貨店の従業員は人間、そしてお客様は動物。主人公・秋乃は新人コンシェルジュ…つまりお客様のさまざまな要望に対応する「総合世話係」として、お客様の相談やリクエストに応えていく。そして、彼女が対応することになるお客様というのが、なぜかいつも“少々見なれないお客様”…そう、「絶滅種」なのである。

 まず、本作は、線のタッチや絵のデフォルメや表情などが美しくて優しく、しかしながらどこかに鋭さを秘めている。非常に個性的である。作者は、緻密に線を重ねる独特な表現で装画家・イラストレーターとしても活躍していると知り、納得した。さらに、物語の構成やキャラクター性、セリフ回しまでもが、これまでふれてきたコミックとはどこか違って、異質さを感じる。それが新鮮で心地よく、ページをめくる手が止まらなくなる。

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 主人公が担当するお客様は「絶滅種」と先述したが、例えば、本書1話目ではワライフクロウが登場する。ニュージーランドに生息していたが、1914年にサウスカンタベリーで目撃されたのを最後に絶滅。高笑いのような鳴き声が特徴であり、こういった絶滅種の情報にもふれる楽しみがある。この話では、ワライフクロウの夫婦と、2人を接待するフェレットのお客様に対して、主人公は傾聴と観察、そして女性心理を察して気を利かせ、3人のお客様を幸せにした。

 別の話ではこの他、ウミベミンクのお客様、ニホンオオカミのお客様などが登場する。ちょっと思い込みが強くドジなところがある主人公は、行動力があり一生懸命に接客する。話を重ねるほどコンシェルジュとして成長し、「北極百貨店」をいっそう愛していく様に、読者はほっこり温かい気持ちになれる。

 本作は2023年秋にアニメ映画化が決定。映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』公式サイトでは、ストーリーやキャラクター、特報映像を確認することができる。映像化するのは、「ハイキュー!!」シリーズや「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」など、数々の名作を世に送り出してきたProduction I.G。

 秋のアニメ映画版を心から楽しむためにも、いま、本作を手に取ってみてほしい。

映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』公式サイト
https://hokkyoku-dept.com/

文=ルートつつみ (@root223

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