3つのステップで簡単美文字。クセ字を直し、自信が持てる「9マス美文字メソッド」とは

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公開日:2023/8/20

9マス美文字練習帳
9マス美文字練習帳』(根岸和美/あさ出版)

 最近、文字を書いたのはいつだろう。メールやチャットツールでのやりとりが主流になり、文字を書く頻度は減少している。しかし、書かなければいけないタイミングは突然やってくる。例えば、職場の同僚にちょっとしたメモを残すとき、学校に提出する書類を子どもが持ってきたとき、冠婚葬祭で熨斗袋や不祝儀袋、芳名帳などに名前を書くとき。自分の手書きの文字を他人に見られることが恥ずかしいと思ったことはないだろうか。

 自分の書く字に自信がない、クセ字は直らないと諦めている、字を書くときに何度も書き直してしまう。そんな手書きに対する悩みを解決してくれるのが、この本『9マス美文字練習帳』(根岸和美/あさ出版)だ。

 著者の根岸和美氏は、書道家としての自身の活動に加えて書道教室を開いており、35年以上子どもから大人まで幅広い世代へ書道を教え続けている。

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 本書で紹介されている「9マス美文字メソッド」とは、9分割にしたマスを使って文字を書く練習法だ。根岸氏は「このメソッドを使うことで6歳の幼稚園児でも簡単に文字のつくりを理解できるので、初見でも手本そっくりに書くことができ、さらに練習を重ねることで、文章なども美しく書けるまでに上達します。」と伝えている。

「9マス美文字メソッド」は「見る」「なぞる」「書く」の3つのステップで構成されている。まずは、手本をじっくりと観察して「見る」。9マスの枠の中でどこから始まってどこで終わるのか、文字の形を意識しながら見ることで文字のイメージを脳内に作っていく。次の「なぞる」のステップで脳内にイメージした文字を確認する。最後は手本を見ながら「書く」。頭の中でイメージしてきた文字の形を意識しながら、実際にペンを動かして練習するのだ。「見る」「なぞる」「書く」を繰り返すことで字が整っていく。

 最初に練習するひらがなとカタカナは、「見る」ステップで具体的にどこに注目すれば良いのかのポイントが書かれているため、初めてこのメソッドに挑戦する人でも文字のイメージを膨らませやすい。

 本書は練習帳なので実際に書き込んで練習ができるのだが、日常生活で書くシーンを想定して、横書きの仕様で文字を練習するマスの大きさも工夫されている。練習する文字もひらがな、カタカナだけでなく、漢字やビジネスで使うフレーズ、名言などが登場しバリエーションが豊富。

 特にビジネスで使うフレーズは「ご確認お願い致します」や「おつかれさまです」など、すぐに使えそうなものばかり。日常で使える言葉を手本を見て練習できるのは嬉しいポイントだ。

 さらに「9マス美文字メソッド」は一度理解すると、本書では紹介されていない文字でもメソッドに沿って美文字を書くことができるようになる。つまり、自分や家族の名前、住所などいろいろなものにも応用が効く。1冊の練習帳から自信を持って書けるようになる文字は無限に広がる。日に日に自分の字が変化していく様子はとても楽しく、もっと書いてみようという気持ちになる。本書を使って文字の練習を続けていると、不思議と書くことに対してネガティブな意識がなくなっていることに気づく。

「キレイで完璧な字を書かなくてはいけない」と思い込んで、文字を書くことにストレスを感じている人はとても多い。しかし、完璧な字を書く必要はなく、字の上手い下手は実は関係ないのだ。「手書き文字は、人の想いを伝える道具」だと根岸氏は言う。想いを伝えるために、文字を正しく丁寧に書くことなら私にもできそうな気がする。

 書くことにストレスがなくなると、書いている時間が心を整える癒しの時間にもなり得る。日々忙しく過ごしている中で没頭できることがあると、雑念から解放され、脳や心が癒される。その没頭できることのひとつが、書くことではないだろうか。字を練習することは、美文字になるだけでなく、多くのプラスの効果を私たちに与えてくれるのだ。

文=北原舞

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