【来年の大河ドラマは紫式部】マンガで『源氏物語』をおさらい!「一気読み」できるから見えてくる光源氏の苦悩とは?

マンガ

公開日:2023/8/20

まんがで読破 源氏物語
まんがで読破 源氏物語』(紫式部:原著、チーム・バンミカス:漫画/Gakken)

 2024年放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」では、千年の時を超える大ベストセラー『源氏物語』を書きあげた紫式部の姿が描かれる。主演は、吉高由里子。大河ドラマというと、戦乱の世を描いた作品が多いが、平安のきらびやかな世界は、一体どのように描かれるのだろうか。多くの人を魅了する恋愛ストーリーを生み出した、才能と努力、秘められた情熱。どのような紫式部像が描かれるのか、今から楽しみで仕方がない。

 来年の大河ドラマをもっと楽しむために今読んでおきたいのが、『源氏物語』だ。だが、原文で読むのは難しすぎるし、現代語訳で読むにしてもとてつもなく長い。「いつかは読んでみたい」と思っていても、手が出せずにいる人は多いのではないだろうか。そんな人にオススメしたいのが、『まんがで読破 源氏物語』(紫式部:原著、チーム・バンミカス:漫画/Gakken)。「まんがで読破」シリーズは、その名の通り、今さら知らないとはいえない名著をまんがで楽しめるシリーズなのだが、特に『源氏物語』をまんが化したこの本は、存分にその世界を味わうことができる。

『源氏物語』の主人公が光源氏であることは、すでに多くの人が知っているだろう。身分の低い女官と帝の悲恋の末に生まれた皇子・光源氏。輝くような美しさから「光る君」と呼ばれた彼は、多くの魅力的な女性たちと出会い、恋愛遍歴を重ねていく。

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まんがで読破 源氏物語

『源氏物語』の原著は全54帖。描かれるのは、70年にも及ぶ長い歳月の物語だ。光源氏の亡き後、その孫の代の出来事まで描かれるこの作品が、この本ではギュッと1冊にまとめられていることに驚かされる。かくいう私は『源氏物語』ファンで、現代語訳版やまんが版など、あらゆる本で『源氏物語』を読んできたが、この作品を「一気読み」したのは初めて。「『源氏物語』ってこういう物語だったのか!」。『源氏物語』を今まで読んだことがなかった人はもちろんのこと、読んだことがある人も、この本を読めば、新しい発見があるに違いない。

 1冊にまとめられているからこそ、見えてくる景色がある。他の本で『源氏物語』を読むと、あまりにも長い物語であるから、何日も時間をかけて読み進めることになるのだが、すると、大筋よりも個々の物語に惹きつけられ、ついつい光源氏に翻弄される女性たちにばかり感情移入させられがちだ。だが、この本を読むと、『源氏物語』の全体を俯瞰して読むことができる。そのため、光源氏の心情が追いやすい。プレイボーイとして知られる光源氏だが、彼の心にはずっと忘れられない人がいた。初恋の女性の面影を探して、彷徨い続ける光源氏。その苦悩はどれほどのものだったのだろう。女性たちではなく、彼の葛藤に心を寄せたのは、初めてのことだったかもしれない。

まんがで読破 源氏物語

 そして、本当の愛を探した光源氏の流浪の日々を追うにつれて気づかされるのが、『源氏物語』が、見目麗しい男の恋愛遍歴を描き出しただけの物語ではないということだ。恋に悩む光源氏の周りでは多くの人たちが権力を求め、出世のために足の引っ張り合いをしている。本書では、2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の脚本を手掛ける大石静氏が作品解説を寄せているが、大石氏はこの作品をこう評している。

『源氏物語』が時代を超えて読み継がれ、世界的にも評価されているのは、男女のラブストーリーに絡めて描かれる人生哲学の部分であり、作家が意志あるものとしてしっかりと存在し、時の権勢を批判するまなざしを持って物語を作り上げたことに対してでしょう。

男女のスリリングなやりとりの中にさりげなく権力批判を込め、身分制度のありようへの批判を込め、するどい人生哲学を込めたこと。その立体感こそが、この物語を世界的なものにしているのだと思います。

 ……なるほど。この本では、そんな『源氏物語』の世界にどっぷりと浸ることができるのだ。

 紫式部はどうしてこの物語を描き出したのか。そこにはどんな思いが込められているのか。来年の大河ドラマに備えて本書を読みながら、是非あれこれと想像をめぐらせてみてほしい。この本を読んでいると、誰もが華やかな上流社会を生きながらも、心の奥底に孤独を抱えていることに気づく。きっとその姿には、作者・紫式部自身の姿が投影されているに違いないだろう。

文=アサトーミナミ

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