50万部突破の話題本で「19×19」を5秒で正確に答えられるようになる!? 2桁×2桁の暗算法をタイムアタックで検証してみた結果

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公開日:2023/8/31

小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本
小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(小杉拓也/ダイヤモンド社)

「小学生向け」という当初の目論見とは異なり、意外と大人にも売れているという『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(小杉拓也/ダイヤモンド社)が50万部を突破するなど話題だ。これは小学校3年生以上を対象にした、九九以上の2桁同士の計算を早く正確にできるようにするための教本である。本書を読めば、11×11から19×19の暗算がすべて5秒でできるようになるらしい。

 聞くところによれば、「今までの半分の時間で解けた」「自慢できちゃう」「かっこいい」という触れ込みがついている。僕もかっこいい人間になりたいとは常々考えていたので、その一歩として、早速、実践&検証してみることにする。

 まずは「11×11から19×19まで」の2桁×2桁の計算問題10問をランダムに設定する。公平性を保つために、計算問題はChatGPTに「無作為に、ランダムに出題して」とチャットを送り、5セット出してもらった。それを紙に書き出して挑戦してみた。

 まずは本書を読んでいない状態で取り組み、正答率と、計算にかかった時間を計測する。続いて、本書を読んだ上で、別の問題に取り組み、正答率と時間を計測して比較したいと思う。

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●本書を読む前の計算

本書を読む前の計算

正答率:80%
かかった時間:1分22秒(1問あたり8.2秒)

 普段から電卓しか使わない生活を送る28歳の計算力は、残念ながら上のような結果だった。普通に計算間違いをしていて呆れてしまった。ここから本書を読んで、正答率100%、計算時間は1問あたり4.1秒(上の半分)、つまり10問で41秒を目指したい。

「さくらんぼ」に「おみやげ」!? 童話のような概念で計算が簡単に

 ふむふむ、小学校3年生以上を対象にしていることもあり、かなり親切に説明してくれている。まずは「さくらんぼ計算」をして肩慣らしをしてみよう、とのこと。さくらんぼ計算とは、足し算を効率よく簡単に行うための計算方法だ。例えば「17+8」の場合、17を20にするために、8を3と5に分けることで、「17+3+5」というように分け、より簡単に答えの25を導こうというもの。大人がするには少々簡単すぎるが、2桁×2桁の暗算のため、小学校3年生に戻ったように無垢な目で、童心にかえったつもりで地道に解いていく。

 続いて、おみやげ算というものを学ぶ章がある。これは右側の2桁の数字のうち、1の位の数を左側の2桁の数字にあげて(おみやげ)、右側の数字を10に揃えてしまうというもの。


「12×17」の場合は、右側の数字17の7を左側に足して「12+7=19」とし、右側を「17-7=10」にする、というもの。
もちろん、12×17=19×10ではないため、この後にもう一手間が必要のようだ。

 続いて、最後の仕上げ。もともとの1の位同士の掛け算の答えを、さきほどの数字に足す、というもの。さきほどの例で考えると、1の位は、2と7。そのため、1の位同士の掛け算の答えは14。よって、「12×17=19×10+2×7=190+14=204」ということになる。なぜその計算式が成り立つのか、ということには目をつむり、答えが合えばいいじゃないか精神で突き進もう。

 このテクニックがあれば、すぐさま答えを導くことができそうだ。では、ChatGPTにランダム出題してもらった問題を使い、計算してみよう。

脳みそが疲れない驚きのテクニックで、1問あたり4秒台を記録

 結局、1回では半分のタイムに縮めることはできなかったが、5回目の挑戦で達成することができた。その記録を下記に示す。

小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本

 驚きなのは、3回目以降、正答率を100%に維持しながら、回答スピードを上げ続けられていることだ。頭をフル回転させる方法であれば、きっと回数を重ねるごとに脳みそが疲れてしまい、回答スピードも遅くなってしまうだろう。しかし、本書で示されているテクニックはなんと言っても至極簡単、それに尽きるのだ。

暗算本が売れるのは、AI化が進む現代社会への必死の抵抗!?

 正直、電卓を使えば一発で答えを導き出せるこの暗算本が、なぜ小学生だけでなく大人も巻き込み50万部も売れているのか、読む前は謎が多かった。しかし、読んでわかった。ひとつに、暗算で瞬時に答えを出す快感がある。電卓やスマホなどの平たい機器を使わずに、自力で、しかも即座に答えを導き出す能力が自分にはあるのだ、と。人間はまだやれるぞ、というプライドが湧き起こるようだったのだ。AIなどの発達によって、人間にしかできないことの幅が狭まる中、自力で何かを達成すること、解決することへの願望の表れなのかもしれない。

 他にも、自分が学んだ後に子どもに教えてあげたいと思う親も多いのではないか、とか、脳トレ的な観点から始めたいと思う人や、何気ない日常で他人にすごいと思われることの一つが計算力だったりする、などが売れている理由なのではないか。

 本書では、ただテクニックを教えてくれるだけでなく、例題や小テスト、問題集もあるため、じっくりやれば誰でも正答率を上げながら、計算速度を上げることができるだろう。実生活で2桁×2桁の計算を要する場面に出くわし、とっさに答えを導き出せば「かっこいい!」と賞賛されるかも……!? 是非、挑戦してみてほしい。

文=奥井雄義

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