「バトロワより唐突に育児始まった…」コロナ禍での出産は孤独の極み、令和子育てを乗り切ったハイテンションマンガ

マンガ

更新日:2023/10/5

令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!
令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(真船佳奈/オーバーラップ)

 育児、特に乳幼児期の育児は孤独との闘いである側面が多かったと、出産後7年経った今思います。特にコロナ禍での出産&育児はさらに孤独だったのでは……そう思っているときに出会ったのが『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(真船佳奈/オーバーラップ)です。本書はテレビ東京に勤める傍ら職場での体験をマンガに書き、マンガ家としてデビューした真船佳奈氏の育児本。妊娠から子育てまでの体験をハイテンションに綴った、笑って泣ける一冊です。

大量の荷物とともに入院 コロナ禍での孤独な出産

 本書は著者の妊活期からスタート。受精の困難さをSASUKEのステージにたとえるなど著者独自の視点がとにかく面白い! なかなか妊娠できなくて病院に検査に行ったり、いざ妊娠したと思えば重いつわりに悩まされたり。そんなネガティブな話題も、振り切れたハイテンションで描かれるのでつい笑ってしまう、そんな面白さが本書の一番の魅力と言えます。特に出産のくだりはかなり詳細。コロナ禍の影響で立ち合い出産はおろか、面会もNGだった著者の病院。ビデオ通話で夫が立ち会う場面はかなり新鮮でした。

 また私も著者と同じ無痛分娩といわれる方法で子どもを産んだのですが、「無痛分娩と和通分娩って何が違うの…?」などの当時の私も疑問に思っていた点を解消してくれ、無痛と言っても中盤は結構痛いことなど(もちろん個人差あり)詳細が描かれているので、無痛分娩に興味がある方にはよりおすすめです。

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バトロワより唐突に始まる育児!? 翻弄される新米母

 産院にはお母さんと赤ちゃんが一緒に生活する母子同室と、基本的に赤ちゃんは病院が預かり、授乳など決まったタイミングで赤ちゃんと対面する母子別室のふたつのパターンがありますが、著者の病院は母子同室。産んだ翌日赤ちゃんが部屋に運び込まれ、赤ちゃんとの暮らしがスタートします。しかし「どうやって抱っこしたらいいのか?」「おむつはどう替えたらいいのか?」など、いざ赤ちゃんと対峙するとわからないことだらけで慌てる著者。その時の感情を「バトロワより唐突に育児始まった…」と表現する著者のセンスが最高。

 そして退院後、著者は産後の母子が宿泊できる産後ケア施設に宿泊。現在では居住地域によっては補助も出るほど一般に浸透してきた産後ケア施設。その内容についても勉強になります。

子どもが生まれて激変する夫婦関係。その涙の結末

 産後ケア施設での日々も終え、ついに家での生活がスタート。これから家族3人、幸せがたくさん待っているはず……と若干産後ハイになって帰宅したものの、夫の行動がいちいちイライラする……!

 これもかなりあるあるの展開。しかし、ここからの崩壊と再生が本書の真骨頂であると感じました。赤ちゃんのお世話の片手間にゲームをし、夜中ぐっすり寝ている夫にイライラを募らせる著者。とある出来事をきっかけに我慢していたものが崩壊、そして和解に向かいます。ふたりでお世話しているはずなのに孤独を感じる著者の気持ち。そして話し合いで明かされた夫側の気持ちは経験者ならば涙なしでは読めないもの。そしてこれから子どもを持ちたいなと考えている方にはぜひ知っていてもらいたいなと感じました。

 個人的には東村アキコ氏の名作育児マンガ『ママはテンパリスト』に次ぐ、笑って泣ける育児マンガではないかと思うほどのクオリティ&育児にまつわる最新情報もわかる、かなりおススメの一冊。妊娠出産を経験した人には笑いを、これから経験する人には安心を届けてくれるはず。もちろんパパもぜひ読んでみてください!

文=原智香

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