藤井流星×矢吹奈子でドラマ化『18歳、新妻、不倫します。』。実は誠実で真摯な、ドSイケメン不倫マンガとは?

マンガ

更新日:2023/11/22

18歳、新妻、不倫します。
18歳、新妻、不倫します。』(わたなべ志穂/小学館)

 タイトルだけ聞くと「どれだけ泥沼な話なんだろう」と思ってしまう人が多いかもしれないマンガ『18歳、新妻、不倫します。』(わたなべ志穂/小学館)は、プチコミックで2019年から今年2023年にかけて連載され、10月からは藤井流星と矢吹奈子のダブル主演でドラマが放送されています。実はインモラルな(不道徳な)話ではなく、真摯さ・誠実さを扱っている本作の導入の第1巻を、本記事ではご紹介します。

 主人公は18歳の三条明花(めいか)。地元でその名字を知らない者はなく、「三条帝国」と呼ばれる大富豪の令嬢で、その権力はときに労働者の恨みを買った事件が起きるほど。しかし、明花は自分の人生に対する不満を日々募らせていた。おまけに、まだ一度も恋をしたことがないのに、高校卒業のタイミングで両親がお見合い結婚をお膳立てしようとしていたのだ。

 そこで明花は、中学生の頃からボディーガードを務めている煌(こう)と偽装結婚することに。明花は煌に「不倫してもいい自由」を与えるが、その自由をもってしても、意外にも煌は明花に近づいてくる。果たして、明花は煌を好きにならずにいられるのか…

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 このあらすじから、「不倫」という言葉の意味合いが普通とは違っていることがわかるかと思います。明花にとって、結婚とは「恋愛を自由にする」ための手段にすぎないからです。

「夫だけは、絶対に好きにならない!」という宣言は普通に考えるとおかしいですが、明花のスタンダードからすると、とてもロジカルです。イケメンがグイグイと迫ってくるのに、好きにならずにいられるかというスリリングな展開もありますが、スッと好きになってしまわないストッパーとなっている、明花の「らしさ」に対する葛藤も物語の重要なエッセンスのひとつです。

 まず、女性であるがゆえに「女性らしさ」を求められる。そして更に「あの子と関わったら家柄のためにめんどくさいことになる」と敬遠される。明花は特に後者のイメージからの解放を望んできました。女性であるので、女性らしさの要求は付きまとう。でも、結婚によって家系からの解放はいくらか可能だと画策したのです。

 実際、友人の誘いで隣県で開催される合コンに参加する際、「隣の県だから相手も萎縮しないでしょう」と友人が気遣います。ところが、結婚したがゆえに、煌がボディーガードという役割を超えて、自由な恋愛を防いでしまいます。

 その介入があながち迷惑ではないというのも、さらなる葛藤スパイラルに明花を誘います。というのも、やや軽率な男性と明花はコミュニケーションすることになるのですが、「せっかく自由な恋愛ができるのに、なんでそんなに不誠実なことを言うんだ」と、明花は不愉快な怒りの感情を抱くからです。

 筆者は最終巻まで読んでいないので、ここからどう話が進んでいくかはわからないのですが、ハチャメチャだけどロジカルな展開から、自分の「当たり前」の基準が浮き彫りになってハッとさせられて、自分がいいと思った方向に勇気を持って進んでいくための後押しをしてくれる作品です。

文=神保慶政

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