プリキュア78人大集合! デザイン20年分の秘密を徹底取材した『プリキュアコスチュームクロニクル』

エンタメ

PR更新日:2024/3/12

貴重な証言てんこ盛り! 歴代関係者スペシャルインタビュー

 本書はデザインなどのビジュアル資料にとどまらず、歴代プリキュアシリーズを作ってきた関係者へのスペシャルインタビューもたいへん充実している。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.216-217

 この1冊の中に、川村敏江さん、鷲尾天さん×西尾大介さん×稲上晃さん、上北ふたごさん、中谷友紀子さん×村瀬亜季さん、斎藤敦史さん×髙橋麻樹さん。そして、バンダイの歴代玩具開発担当者のみなさん。とても盛りだくさんのインタビューが掲載され、それぞれに貴重な製作秘話が語られている。彼らの思いは生み出した作品から既に十分に受け取ってはいるが、その上でなお語られる言葉に耳を傾けることで作品に対する新たな楽しみ方も生まれるだろう。

 そして「プリキュアの20年を振り返る」と題して、“プリキュアの父”こと東映アニメーション・鷲尾天プロデューサーの単独インタビューも掲載されている。

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プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.234-235

『プリキュア』というアニメ作品に、どんな思いや願いが込められているのか。何を大切にしてここまで続けられてきたか。プリキュアを愛する方々にぜひ知ってほしいエピソードが綴られている。

 ファッション・クリエイティブ・ディレクター軍地彩弓さんへのインタビューでは、歴代プリキュアを「同時代性」という観点で捉え直し、各シリーズをそれぞれの時代のトレンドやできごとと関連付けて考察している。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.238-239

「プリキュア×ファッション年表」も掲載されていて、各シリーズを時代の流れの中に位置づけて俯瞰することができる。アニメを見ているだけでは気付かなかった部分に対して新たな視野が開けていくのは、とてもおもしろい体験だ。

衣装や変身アイテムも大集合! よみがえる幼き日の思い出

 各シリーズ間のページに掲載されているコラムも必見だ。歴代の子どもたちがプリキュアに“変身”した思い出の品々、「なりきりキャラリートキッズ&変身プリチューム」「変身アイテム」。時代によるモチーフ対象の変遷や商品としての技術革新を一望することができる。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.168

 この中で、あなたが子どもの頃に夢中になって遊んだアイテムはどれだろうか。もしいまもお手元で大切にされていれば、ぜひ電池を入れ替えて再会を懐かしんでみてほしい。

 そのほか「仲間たち図鑑」では、歴代のプリキュアを支え続けてきたサブキャラクターを紹介している。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.150

 学校の先輩や同級生、妖精、幼なじみ、あるいは憧れのひと。多種多様な形でプリキュアたちをとりまく人々が紹介されている。

 ここに掲載されている『HUGっと!プリキュア』(2018)に登場した若宮アンリ、そして『デリシャスパーティ♡プリキュア』(2022)に登場した品田拓海/ブラックペッパーは、それぞれ歴代シリーズの中でも稀有なポジションにあるキャラクターだ。彼らを含めて、このコラムで気になるキャラを見つけたら、ぜひ本編のほうもご覧いただきたい。

ダークドリーム、キュアエコー、キュアモフルンまで大集合!

 また、以前からのプリキュアファンには、2018年に刊行された「プリキュア15周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル」(講談社)をお持ちの方も多いかも知れない。本書はその増補改訂版であり、厚さは17ミリから24ミリへ。重さも370グラムから520グラムへとパワーアップを遂げている。

 内容の追加は、直近5年分のプリキュアに関連した情報および関係者インタビューの新規収録にとどまらない。今回、新たに「映画オリジナルフォーム」「映画オリジナルキャラクター」紹介コラムが追加されているのだ。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.254-255

 プリキュアでは映画オリジナルのデザインやキャラクターは、公開時期を過ぎてしまうと振り返られる機会もそれほど多くはない。シリーズを取り上げる機会があっても、特に触れられない場合もある。それだけに、今回まとまった形で紹介されたことはとても喜ばしい。

 ここに掲載された『映画Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』(2007)のダークドリームは、同作映画限定の単発キャラである。しかし劇中で非常に強い印象を残し、公開から16年が経った今もなおファンの間で高い人気を博している。

 また『映画プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』(2012)のキュアエコーも当初は同作限定のキャラであった。しかしその根強い人気から、映画やTVシリーズなどでたびたび再登場を果たしている。

 そして『映画魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!』(2016)より、キュアモフルンまでもがバッチリ掲載されている。それも「モフルンスタイル」のみならず、劇中に登場したルビー、サファイア、トパーズ、そしてハートフルの全てのスタイルが網羅されている徹底ぶりだ。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル p.248-249

ぜひ、お子さんと一緒に。

 そして表紙の初代プリキュアと対になる裏表紙を飾るのは、放送中の『ひろがるスカイ!プリキュア』(2023)より、キュアスカイとキュアプリズムのコンビ。初代への「原点回帰」を意識した同作らしく、表紙と裏表紙で象徴的な対比となっている。

「黒と白」という鮮烈なコンビで幕を開けた『プリキュア』は、長い時を経ていま「ブルーとホワイト」というコンビがメインを張る地点に立っている。おそらくはここも、これからもずっと続いていくプリキュアの長い歴史の中ではひとつの通過点になっていくのだろう。ここから先、『プリキュア』が時代とともにどんなファッションを見せてくれるのか。ぜひ本書を手に取ってこれまでの歴史を振り返り、そして一緒に本書の「その先」を見届けてほしい。

プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル

 ここまでご紹介してきたように、本書では歴代プリキュア78人のコスチュームデザインについて多角的な視点から関係者に徹底取材を重ね、詳細に分析している。ゆえに児童向けというよりは、ある程度以上の年齢層を意識した書籍ということになる。

 しかし、本書を敢えて小さなお子さん方にもおすすめしたい。本書は細かくてルビのない字も多く、確かにお子さんにはハードルが高い。それでも随所に掲載されたプリキュアのイラストは、きっとお子さんのハートをつかむはずだ。今はまだ完全に読めなくても、大きくなって学校に通うにつれ、少しずつ書かれていることがらを理解できるようになっていくだろう。それまではぜひ保護者の方が一緒に読んで、興味を持ったページを読み聞かせてあげていただきたい。そして本書とともに成長していくお子さん方の姿を、ぜひ見守ってあげていただきたい。

 そしていつかの未来、本書を読んだ子の中から、アニメーターを志してプリキュアのキャラクターデザインを手がける人、プロデューサーやディレクターとしてプリキュアを製作する人、デザイナーやエンジニアとしてプリキュアの変身玩具の開発に携わる人、編集者やライターとしてプリキュアの関連書籍を生み出す人が出てくるかも知れない。

 そうしてプリキュアの歴史が繋がっていくことで、プリキュアの歴史を振り返る本書もまた、これからも続いていくプリキュアの歴史の一部となることだろう。

 いわば本書は、プリキュア20周年という一里塚の“読むマイルストーン”である。ぜひ、ご自宅にある「あなた自身のプリキュア史」が詰まった場所に、20周年の思い出として本書も並べていただきたい。

文=祥太 (SHOWTIME)

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