気取らない等身大のイモトアヤコに共感! 窮屈な暮らしも旅のように楽しむ日常を綴った新作エッセイ登場

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/7

よかん日和
よかん日和』(イモトアヤコ/文藝春秋)

 イモトアヤコさんといえば、バラエティ番組「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)での「太い眉毛のセーラー服姿」を思い出す方も多いかもしれない。番組ロケで世界中を飛び回り、パスポートは5冊目、ヒマラヤ登山に秘境探検……常人にはなかなか真似できない驚くべき活躍を続けてきた彼女は、33歳の時に同番組のスタッフと結婚し、妊娠、出産。実はそうしたライフステージの変化と並行して、近年「すっぴん」のイモトアヤコさんとして活躍の場を広げているのをご存じだろうか。現在「イモトアヤコのすっぴんしゃん」(TBSラジオ)でラジオパーソナリティーをつとめるほか、2020年には累計6万3000部を記録した初エッセイ『棚からつぶ貝』(文藝春秋)を刊行。そしてこのほど待望の新刊『よかん日和』(文藝春秋)を発売した。

 本書タイトルの『よかん日和』とは、イモトさんが編集長をつとめるWebマガジンのタイトルでもある。結婚とほぼ同時にコロナ禍となり、海外ロケはおろか国内での移動も制限がかかるようになった中で、圧倒的に日々の生活にドキドキやワクワクが足りていないことに気がついたイモトさんは、「自分がワクワクドキドキできる場所、そしてそれを誰かと共有できる場所」は自分で作ればいい!との思いでWebマガジン「よかん日和」をスタート。本書はそのマガジンに掲載されたイモトさんのエッセイに加筆したものをまとめたものだ。

「明日なにか良いことあるかも。この道具使ったら楽しいかも。こんな人に会ったら素敵になるかも。ドジ踏んじゃったけど、こういう風に思えば気持ち軽くなるかも。そんなわたしなりの『よかん』を集めてみました」と「まえがき」に書くイモトさん。本書は「ステキな人/物/思っていること/日々のこと/子育て」といったテーマでまとめられ、それぞれにイモトさんの「素」の目線がキラリと光る。

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 味噌を手作りしてみたり土鍋でご飯を炊いてみたり、いわゆる「丁寧な暮らし」に憧れて張り切るけれど、なんか違ってしまう(そんな自分をイモトさんは「ズボラな私」と正直に吐露)。そしてイモトさんの日常はとってもお茶目。子どもが生まれたら生まれたであっさり「丁寧がどうのこうのとか、言ってられなくなってきた!」とさっさと白旗をあげるのも正直でいい。妊娠、出産、子育てとライフステージが変わっても、イモトさん自身のまっすぐさはずっと変わらず、芸能人というより「日々を楽しむ生活者目線」なのも共感度が高いポイントだ。

 それにしてもイモトさんは、日々の暮らしの中のちょっとした気づきをポジティブに捉えるのが実に上手だ。たとえばどうにもならない子育てのあれこれを「そういうものなのだ」と割り切って発想を転換して「楽しみ」に変えてしまうなど、「小さな幸せ」をキャッチする能力がとても高いと感じる。実は心理学の世界ではこうした「小さな幸せ」の積み重ねが大きな幸せにつながるとの説もあり、こうしたイモトさんの感性は見習うことが多いだろう。背伸びしすぎない彼女の感性にハッとしたりほっこりしたり、ますます「すっぴん」のイモトアヤコさんに興味がわくのは間違いない。

文=荒井理恵

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