「控えめに言っても推しが最高なので、残業できません」を英語で言うと?寝坊、遅刻、残業などで使える『ろくでもない英語の言い訳300』

文芸・カルチャー

更新日:2024/2/1

ろくでもない英語の言い訳300
ろくでもない英語の言い訳300』(中山/ダイヤモンド社)

 英会話ができれば…とは、誰しも一度は思ったことがあるはず。かくいう筆者も「英語ができればカッコよさそう」と思って手を出した経験はあるが、今なお、身についてはいない。世間では、参考書も数多くある。しかし、文法や単語を真正面から学ぼうとすると、どうにも挫折してしまうのだ。

 ゆるく、気ままに学べる。まず、英語学習のモチベーションを上げてくれる参考書はあるのかと思い、気になったのが『ろくでもない英語の言い訳300』(中山/ダイヤモンド社)だった。本書にあるフレーズはタイトルのとおり、本当に「ろくでもない」ものばかりだ。しかし、英語学習への「熱い心意気に応えられる本ではない」と謙そんする著者の主張とは裏腹に、英語は面白いと気づかせてくれる。

寝坊しちゃったんだから仕方ない…ベッドでふとつぶやきたくなる一言

 脱力系のイラストと共に「寝坊」や「遅刻」、「アフター5」など、日常のあらゆる場面で“使えそうだけど、使わないだろ、コレ…!と、思わずツッコミたくなる「言い訳」フレーズを紹介する本書。純粋に読み物として、ページをペラペラとめくっているだけでも楽しい。例えば、先述の「寝坊」では、以下のフレーズがある。

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 遅刻が決定的となり、ベッドで開き直る青年。彼のイラストと共に紹介しているのが「Joke’s on you, I’m just a mere afterimage. The real me is already on the way to the office」のフレーズだ。その意味は「残念だったな。俺はただの残像さ。本物はとっくに会社に向かってるよ」である。

 そもそも“お前は誰に言ってるんだ”と強くツッコみたくもなるが、英語でつぶやいているのをイメージすると、なぜか、カッコよく思えてくるのはちょっと悔しい。なお、残像とは「そこにあったものが、去った後でも視覚に残っている映像」であり、「例文のように何事も『遅さ』だけには定評のある人間が安易につくうそ」と言い切る著者の解説も、そのシチュエーションにさらなる“味”をもたらしている。

“推し”への愛を原動力に。定時帰りを何としてでも死守するためのフレーズ

 先述の「アフター5」も大切にしたい。仕事とプライベートを上手に両立する“ワークライフバランス”や、人生の質を示す“QOL”などのキーワードが目立つ昨今において、職場での定時帰りは命題である。そこで使いたくなるのが、以下のフレーズだ。

 今や、多くの人びとが“推し”を持つ時代に。困惑する上司を前に、“推し”の写真を手にしてアピールする部下のイラストと共に紹介しているフレーズが「To say the least, my fave is the best, so I can’t work overtime」である。日本語訳は「控えめに言っても推しが最高なので、残業できません」だ。

 上司と部下、どちらに理解を示すかでシチュエーションへの思いも変わってくる。引いているのか、あきらめているのか…どちらとも取れる上司の表情、嬉々として“推し”への愛をたぎらせる部下の表情と、ほんの一幕に喜怒哀楽の奥深さがにじむ。著者による「推し活動家によって労働環境が改善され、代わりに春闘を戦う日は近そう」の一言にも、色々な思いを巡らせてしまう。

 語学の勉強では「読む」「聞く」「話す」「書く」を「バランスよく鍛えることが大切」と、著者は伝える。本書にある「300」のフレーズそのものは、おそらく日常的に使うものではない。しかし、例文を「ナレーション制作アプリ」に入力して音声を繰り返し聴くなど、使い道はあるという。英語学習に挫折した経験がある人たちの入り口として、勉強に疲れてしまった人の息抜きとして、きっと役に立つはずだ。

文=カネコシュウヘイ

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