「いじめ問題」の最前線がここに…『なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち』でTBS記者が提言する予防対策とは?

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公開日:2023/12/20

なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち
なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち』(川上敬二郎/ポプラ社)

「いじめはね やめるじゃなくて はじめない」。これは第8回「いじめ防止標語コンテスト」の愛知県・小学生の部で全国賞に選ばれた標語だ。いじめは1980年代から社会問題として取り上げられるようになり、さまざまな対応策が講じられるようになって久しい。だが依然として撲滅には至らず、とりわけ2022年に小中高校で認知されたいじめの件数は過去最多の68万1948件を記録してしまった。

 そんな歯止めのきかなくなりつつある問題にどう向き合っていくべきなのだろうか。2023年12月6日(水)に刊行された『なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち』では、こうした問題を約20年にわたって取材し続ける著者の提言が記されている。

 同書を手掛けた川上敬二郎氏は、1996年にTBSへ入社し、報道局で社会部記者を経て現在は「報道特集」のディレクターを務める人物。日本全国で深刻化している「いじめ問題」を中心に取材を行い、さまざまな視点からメディアを通して課題や予防対策などを提起し続けている。

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 また、川上氏は2020年9月より「TBS NEWS DIG」で「いじめ予防100のアイデア」を連載。同書はこれを大幅に加筆・修正し、いじめの実態や各専門機関が取り組む対応策、そして著者が考える予防策などを盛り込んだ一冊だ。

 まず同書では、第1章として「いじめ問題の正体」が語られている。2019年にこの世を去った“いじめ問題の智将”森田洋司氏が行った講演に始まり、昨今急増している“ネットいじめ”にもフォーカスしていく。

 続く第2章「これからのいじめ予防対策」では、2021年12月放送の「報道特集」で密着取材した親子を例に具体的な予防策が示されている。なんでも現代のいじめはネットの利用時間と密接な関係があるらしく、とくに“スマホ依存”からの脱却が大きなカギを握っているという。

 そして第3章「明日からできる効果のある『いじめ予防』授業」では、最先端と呼ばれるドイツの教育例をピックアップ。ほかにもフィンランドで効果が認められているという学習プログラム「KiVa(キヴァ)」など、具体的なカリキュラムも紹介されている。

 いじめ問題を最前線で取材し続けてきた川上氏が、「一人でもいじめで苦しむ人が減ればと願い、書き続けました」と語る『なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち』。手に取った人からは、「わたしは社会人で子どももいませんが、同書はそういう人にこそ読んでもらいたい」「諸外国で行われているいじめ対策が紹介されており、日本でも取り入れてくれたら改善するのかな…と思わされた」などと関心の声が集まっている。

 学校などの教育機関はもちろんのこと、国民全員が一丸となって取り組むべき「いじめ問題」。ひとりでも多くの人が同書を手に取り、撲滅につながることを願うばかりだ。

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