月給20万円で犬が仕事をする?「街のいたるところにステッカーを貼りまわる」仕事をする犬のゆるライフ

マンガ

公開日:2024/1/8

貼りまわれ!こいぬ
貼りまわれ!こいぬ』(うかうか/秋田書店)

 もし、今まで勤めていた会社が倒産してしまったらどうするだろうか。生きていくためにはお金を得る方法がなければならない。潤沢に資金が得られる不労所得でもない限り、必死に次の職を探し求めるだろう。だが、なかなか仕事が決まらず心が折れそうになるかもしれない。今までやってこなかった新しい仕事をやらざるを得なくなるかもしれないし、人間関係や仕事内容に悩むこともあるだろう。自分に合う仕事を見つけることはなかなかに難しいものだ。

 いきなりの倒産と求職からはじまるため、絶望的なマンガかと思いきや、『貼りまわれ!こいぬ』(うかうか/秋田書店)は、こいぬや犬たちのゆるゆるな日常生活を描いた癒やし系である。主人公のこいぬは、求職中に見つけた求犬チラシから、今までしてきた仕事とは全く違う奇想天外な仕事につくことになる。それが、「街のいたるところに犬のステッカーを貼りまわる」ことである。こいぬは、この謎の仕事に一生懸命取り組んでいき、月給20犬万円を得ることになる。

 この世界は、犬が人間のように二足歩行で暮らす世界で、会社や学校にも行く。だから、会社も倒産するし、仕事帰りに仲間たちと酒を飲みにも行く。しかし、全てがシンプルにかわいらしくデフォルメされた犬なのだ。犬がカウンターに並んで飲みながら、後輩の指導に悩むシーンがある。人間のそういった状況ではシリアスな雰囲気が漂うはずなのに、何故か空気が抜けたゆるい感じになってしまうのだ。作者の描く犬たち全てにゆるさを感じずにはいられない独特の雰囲気があり、惹き込まれていく。

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「犬のステッカーがない世界より犬のステッカーがたくさん貼ってある世界のほうがいいだろう」貼り続けることで犬々に影響を与えている……?

 こいぬは、他の犬に比べて小柄だ。ふと気付くと、誰かの近くでステッカーを貼っている。犬々の暮らしにステッカーとこいぬが入りこんでくるのだ。カラオケの個室やレストラン、スーパーなどどこにでも現れる。ステッカー貼りは、営業妨害な行為と見せかけて、犬々を救う結果につながることもある。こいぬがレストランに侵入した時、ステッカーをメニューに貼ってしまう。オーナーは、捕まえたこいぬをオムライスにのせるというおしおきを考える。しかし実際には、オムライスに犬型の大根おろしをのせる新メニューを開発し、経営が傾いた店が一気に人気店となる。

 こいぬが行く先は不法侵入も多くあり、見つかると脚や身体の一部を掴まれて、ぶら~んとぶら下げられるように捕まって、怒られてしまうことが多い。その様子を読んでいるこちらは面白いが、こいぬにしたら身の危険だろう。それでも、ひたすらステッカーを貼るという仕事をこいぬは遂行していく。捕まることもあるのに、震えたり泣いたりもしながら真摯に貼り続ける様子が、なんともいじらしくてかわいくて、たまらない気持ちになる。

アニメ化が待ち遠しい!映像の中で貼りまわるこいぬに早く会いたい

 疲れた時やかなしい気分の時、こいぬが気付いたら部屋にいてステッカーを貼っていることを想像してほしい。驚くかもしれないが、小さくてかわいいこいぬがステッカーを貼り続けていくそのひたむきな姿に癒やされるだろう。ごはんをあげるから自分の部屋にも来てほしい、ずっと見ていたいと思ってしまう。

 SNSで話題となった本作は、2024年1月から、テレ東ほかにてアニメ化が決定している。こいぬと犬々が映像でどのようにゆるく表現されるか必見である。

文=山上乃々

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