『【推しの子】』赤坂アカの新作が登場! あの人を振り向かせるために利用した『恋愛代行』。混迷を極めるラブゲーム、開幕

マンガ

PR公開日:2023/12/29

恋愛代行
恋愛代行』(赤坂アカ×西沢5㍉ /集英社)

 退職、掃除、謝罪、引っ越し……。世のなかにあふれる面倒なこと、苦手なこと、難しいことを肩代わりしてくれる人たちがいる。それが「代行業」だ。そのなかにもしも、「恋愛代行業」があったとしたら、あなたは依頼するだろうか?

 実写映画化もされた『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』、そしてアニメ化されるや否や、YOASOBIが歌う主題歌とともに話題を集めた『【推しの子】』(原作担当)。これらの大ヒット作を生み出した赤坂アカさんによる新作が登場した。その名も『恋愛代行』(赤坂アカ×西沢5㍉ /集英社)。そう、タイトルの通り、本作で描かれるのは「恋愛の代行を頼む人たち」が右往左往する姿である。

 ヒロインとなるのは、麻理・マリーア・ウィンター=七瀬。私立青芝高校に通う女子高生だ。麻理は青い瞳にブロンドの髪の毛を持ち、大和撫子らしさも兼ね備えているという、誰からも「完璧すぎ」と認められる存在。女子生徒からの人気はもちろん、男子生徒からも好意を寄せられている。しかし、麻理は女子校育ちであり、しかも厳粛なシスターのもとで育てられた箱入り娘。そのため男子に対する免疫がなく、日常会話すらままならないレベルだった。

advertisement
恋愛代行 P3

恋愛代行 P6

 そんな彼女が恋をしたのは、よく図書館に居る男子生徒の関マサヤ。チャラチャラしたその辺の生徒とは異なり、どことなく誠実で真面目な雰囲気を放つ関に、麻理は安心感と好意を抱いている。でも、自らアプローチすることはできない。じゃあ、一体どうすればいいのか……。

恋愛代行 P10

 そこで麻理が頼ったのが、「恋愛代行」だった。100万円を超す依頼料も何のその、金に糸目をつけない麻理は、正式に恋愛代行を依頼する。こうして麻理の恋愛が動き出す――かと思われたが、ちょっと違う。そこは赤坂さんの作品、こんなにシンプルに物事が進んでいくわけがない。

恋愛代行 P16

 恋愛代行を使っていたのは麻理だけではない。実は関もまた、恋愛代行を使い、麻理に近づこうとしているのだった。そしてさらに、麻理と関が依頼した先は同じ「株式会社代行ドットコム」の恋愛代行部門。その部門に勤める相川琥紺が麻理の、松田ケンゴが関の恋愛代行を請け負っている(しかもふたりは犬猿の仲)。つまり、麻理の言葉や振る舞いは琥紺が指示したもので、関のそれは松田が指示したものというわけで、じゃあそれで恋愛が成就したとして、一体誰が誰のどこを好きになったということなのか……と混乱に混乱を重ねるストーリーが展開されていくのである。

恋愛代行 P40

恋愛代行 P41

恋愛代行 P42

 作中では琥紺や松田がとっておきの恋愛テクを披露する。麻理も関も素直にそれに従うのだが、もはやそれが効いているのかどうかもわからない。このハチャメチャ感が非常に面白く、これまでになかったラブコメの世界観を構築している。

 しかも読み進めていくと、麻理と松田が、そして関と琥紺が現実世界で接触してしまうから、もう大変。物語はますます混迷を極め、先が読めなくなってくる。

 赤坂さんは『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』でも恋愛をなかばバトルやゲームのように描き、読者を沸かせた。それを踏まえると、本作はその進化系とも言えるかもしれない。代行業者が介入し、どれが本心かわからないなかで、それぞれのキャラクターの思惑が交錯していくさまは、さながら頭脳ゲームのようでもある。

 先が読めないストーリーを生み出す天才による、新感覚のラブコメ『恋愛代行』。そこで描かれる恋模様がどのように決着するのか、きっと誰にも予想がつかないだろう。

文=イガラシダイ

あわせて読みたい