【ドラマ化&コミカライズ決定!】「書き終わって改めて読んでみたら、新しい発見ができました」――『アイドル失格』安部若菜インタビュー

文芸・カルチャー

更新日:2024/1/9

取材・文:ふくだりょうこ 撮影:SHERPA+ 尾形正茂

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2022年に『アイドル失格』で小説家デビューを果たしたNMB48の安部若菜さん。発売即重版などで話題を呼んだデビュー作がこのたび、ドラマ化&コミカライズされる。
出版から約1年で実現したメディアミックスに、いまどのような胸中か、そして今後の作家としての活動についても聞いた。

ドラマ化&コミカライズ化記念
『アイドル失格』安部若菜インタビュー

実感は湧かない。でも脚本をチェックしているときが一番「原作者をしているな」って思いました

――発売から1年というタイミングでのドラマ化、コミカライズです。決まったときのお気持ちはいかがでしたか。

安部:未だに実感がなくて。どうなるのか、ドキドキ、ソワソワしています。
でも、ドラマの撮影を見学させていただいて、「自分が小説の中で考えていたアイドルグループが存在している!」という感動と、衣装や曲も出来上がっていって……ドラマの中でどんどん世界が作られているのが本当に嬉しいです。

――周りの方からの反響も大きかったのでは?

安部:ドラマ化が発表されてから、「おめでとう」という声をたくさんいただいたのと同時に、「すごいね!」と自分が思っている以上の反応をいただけて。そこですごいことなんだとやっと気がつきました(笑)。

――本当に少しずつ実感が湧いているところなんですね。ドラマ化にあたって、作品を読み返されたりもしたんですか?

安部:しました。こんなふうに書いていたんだ、と恥ずかしくなるところがあったり、ここもっとこうしたかったな、という部分が出てきたりするんですけど、読み返すたび感慨深い気持ちになります。もう少し会話を入れたらよかったな、とか真面目に反省もしています(笑)。

――脚本は読まれていかがでしたか?

安部:私自身、これまであまりドラマに出演する機会がなかったので、台本が届いたときはすごく感動しました。ドラマオリジナルのエピソードや登場人物も新たに出てくるので、ドラマ版ではまた違った味わいがあります。脚本をチェックしているときが一番「原作者をしているな」って思いました。

メンバーの素を知っているからこそのキャスティング

――作中に登場するアイドルグループ「テトラ」はNMB48のメンバーのみなさんが演じていらっしゃいます。グループ内に役者と原作者がいるケースは稀かと思いますが、キャスティングにも安部さんが関わっていらっしゃるんですか?

安部:NMB48のメンバーでやらせていただくとなったときに、私が候補として挙げたメンバーをそのまま採用していただけました。みんなの素を知っているからこそ難しい部分もありつつ、逆に「このメンバーのこういうところをぶつけてもらえたらな」という思いもあったんです。魅力的な子がたくさんいるので本当に迷いました。でも一番いいテトラが完成したと思っています。

――それぞれどういった理由でお選びになられたのか、お聞きしてもいいですか?

安部:一番迷ったのは主役の小野寺実々花ちゃんです。望叶(山本望叶)は一緒に活動をしていてアイドルとしてのミステリアスさを感じる部分がありますし、NMB48でセンターも務めているので、重なる部分も多いんじゃないかと。気持ちを内側に抱え込んでしまうタイプなので、そういった葛藤が一番共通しているのかな、と思います。
一ノ瀬萌ちゃんは川上千尋さんにお願いしました。テトラの4人の中では一番の先輩なんですけど、演技面でも引っ張っていって貰える存在だと思います。あと、萌が物語の後半で大事な役割を担うのでその点と、やっぱりツインテールとピンクが似合う人、というのが決め手です。
空野あかりちゃんは、元気な人、というところで上西怜さんにお願いしました。能天気で天然で、底抜けに明るい人、と考えたときに怜さんが思い浮かんだんです。それを本人に伝えたら「ちょっと複雑」って言われたんですけど(笑)、あかりに関してはほかのNMB48のメンバーからも一番似合っていると言われるぐらいハマリ役です。
最後、川嶋サヤちゃんがすごく難しくて。サヤはショートカットで背が高くてリーダーなんですけど、NMB48の中にショートカットのメンバーがあまりいないんです。誰にしようか考えたときに、メンバーを引っ張ることができて、周りも見ることができる芯の強いメンバーということで泉綾乃ちゃんを選ばせてもらいました。今回、4人の中では最年少ですが、衣装を着ているのを見て、顔の小ささとスタイルがスラッとしているのが、まさにサヤだ!間違いなかった!と思いました。

――役が決まったときのみなさんの反応はいかがでしたか?

安部:伝えたときはまずびっくりしていました。「いいの?」って。でも、本当に喜んでくれました。普段からお芝居を頑張りたいと言っているメンバーでもあるので、本当に前向きです。
望叶は、「共感する部分がある」って言ってくれて、アイドルがアイドル役を演じるからこその想いも直接聞けました。
怜さんには「すごく明るくて場を盛り上げるような役です」って、選ばせてもらった意図を直接伝えることができたのでよかったです。
メンバーが楽屋や、握手会の合間にも台本を読んでいる姿をたくさん見たので、ドラマもすごく楽しみです。

作詞に初チャレンジ。「秋元先生の偉大さが身にしみました」

――小説とドラマとではやはり違う視点から作品の良さが見えてくるかと思いますが、安部さんご自身が楽しみにしている部分はありますか?

安部:ケイタと実々花のデートシーンです。小説では映画館デートですが、ドラマでは映像にしたときのことも考えて違う場所です。映像としての映えもポイントですし、映像になることでよりドキドキきゅんきゅんしながら観られるんじゃないかな、と思います。
あと、テトラのライブシーンを観るのが楽しみです。監督からもライブシーンには力を入れています、とお聞きしていますし、曲ができることも楽しみだったんです。みんなが歌って踊っている姿を、客席からたくさんの人が観ている画を観られることに本当にワクワクしています。

――曲には携わられているんですか?

安部:2曲あって、どちらも歌詞を書かせていただきました。初めての作詞だったので、不安もありつつ、書いた詞が歌になる嬉しさがありました。
いつもNMB48のミュージックビデオを撮影するときに、当日歌詞が来たりするんですが、今になって「そういうことか」と秋元康先生の偉大さを身にしみて感じてます。

――実際、作詞されてみていかがでしたか?

安部:曲が来てから歌詞を合わせていったんですけど、音に合わせるのがすごく難しくて。自分がイメージしたものを書いて送るんですけど、声をのせたサンプルを聴いてみるとしっくりこないんです。いい曲にしたいという気持ちがあったので、申し訳ないなと思いながら何回もやり直しをお願いしました。それをみなさんに聴いてもらえるのもドキドキです。

他の人が見る『アイドル失格』が形になるのが魅力

――コミカライズを担当されるのは空神セイ先生です。「コンプティーク」2月号からスタートとなりますが、キャラクターデザインは見られたんですよね。

安部:もともと小説にもイラストがあったので、そこからどうなるのかな、と思っていたんですけど、もうすごくかわいくて! 「空神先生のテトラだ!」って思いました。空神先生の絵が好きでお願いさせていただいたので、見られることも感動ですし、小説と漫画とドラマでこんなに表現の仕方が違うんだと知ることができておもしろいです。

――原作者側としても情報が盛りだくさんですね。

安部:そうですね。しかも自分以外の人が作る『アイドル失格』が形になるのもすごく魅力だなと思っていて。自分が何気なく書いた一文でも、いろんな捉え方をしてくださっているんです。でも本当に空神先生とは「解釈一致だ!」ということが多くて。丁寧に心情を切り出してくださっていますし、本当に原作に忠実に書いていただいているので、嬉しいです。

――書いているときと同じぐらい、ドラマ化、コミカライズでこの作品の中に没頭されているんですね。

安部:書いているときはどんどん進めていかなければならないので、途中途中でしか世界に入れなかったんですけど、書き終わって改めて読んでみたら俯瞰で見ることができて、新しい発見ができました。

2作目を執筆中。小説は「一番自由」

――今はどっぷりと『アイドル失格』の世界観にいらっしゃいますが、次はどんな作品を書かれるのか気になっている方も多いかと思います。

安部:今絶賛、プロットを進めているところです。1作目は自分の境遇とアイドルをストレートにぶつけた作品でしたが、改めて自分が書きたいものを考えたときに、夢や将来についての想いが強いんだな、ということに気がつきました。2作目も、夢を追いかける人たちだったり、なにか勇気を渡せるようなお話を書けたらいいなと思ってます。

――表現する方法をたくさん持っていらっしゃる中で、安部さんにとって、小説を書く楽しさとはどういった点ですか?

安部:一番自由だな、と思います。
ドラマや作詞などは、人と一緒に作り上げるからこその良さもあるんですけど、小説は編集さんもいるものの、基本的に1人で書き進めていきます。それが大変でもあったし、楽しくもあったな、と思います。いろんな経験を積んで、小説で表現していきたいです。

ドラマ『アイドル失格』

2024年1月13日(土)よる11時スタート!
BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)
出演:山本望叶(NMB48) 小林亮太
   川上千尋(NMB48) 上西怜(NMB48) 泉綾乃(NMB48) ほか

漫画『アイドル失格』

『コンプティーク2月号』よりコミカライズも始動!
漫画:空神セイ

プロフィール

安部若菜(あべ・わかな)
2001年7月18日生まれ、大阪府出身。NMB48のメンバーで、現役大学生。性格は内向的で、小さい頃は友達が出来ず、本が友達の幼少期を過ごす。毎日図書室に通い、1年で100冊程の小説を読んでいた。特に好きな本は、自分の想像力次第で世界が広がるファンタジー小説で、小学生の頃の愛読書はミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。本を読み続ければ、いつか本の世界に入れると本気で信じていた。中学、高校と進学するも、学校に行かなくて済む方法を考えながら日々過ごしていた。アイドルなら学校に行かなくて済むのではないかという考えと、アイドルが好きだった憧れからオーディションを受け、2018年1月、NMB48に合格する。小説、落語、投資と様々なジャンルで積極的に活動の幅を広げており、“100通りの楽しみ方ができるアイドル”として活動中。

作品紹介

アイドル失格
著者 安部 若菜
発売日:2022年11月18日

NMB48の安部若菜が本気で描く、禁断の「アイドル×オタク」恋愛小説!
僕と彼女は、決して結ばれない運命なのだ– 選ぶのは、恋か、夢か。

冴えない日々を送る大学生のケイタは、4人組アイドルグループ「テトラ」のセンター・実々花の熱烈なオタク。
叶わないと分かりつつも本気で恋をしていた。
一方、高校3年生の実々花は、グループの人気が順調に上がり、
熱心に応援してくれるケイタの好意を嬉しく思いながらも、
将来に漠然とした不安を抱えていた。
ある日、実々花は母親との衝突をきっかけに自暴自棄になり、
SNSの情報を頼りに思わずケイタのバイト先へ向かってしまう――。

NМB48の現役アイドルが本気で描く、切なくも希望に溢れた青春小説
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