孤独な夜はあれこれ考える前にとりあえず寝ろ? 可愛すぎるキャバ嬢から学ぶ、人生の向き合い方

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/1/23

明けない夜はないって言うけど、夜が明けるまでの過ごし方を誰も教えてくれない。
明けない夜はないって言うけど、夜が明けるまでの過ごし方を誰も教えてくれない。』(きほ/イマジカインフォス)

 クリスマスや年末年始など、イベントの多い季節は孤独を感じやすいらしい。たしかに、キラキラした分かりやすい幸せが並ぶSNSを見ていると「それに比べて自分は…」と考えてしまいがちだ。昔よりも人とつながることが容易になったからこそ、必要のない情報に惑わされて自分を見失ってしまう人も多いのかもしれない。

明けない夜はないって言うけど、夜が明けるまでの過ごし方を誰も教えてくれない。』(きほ/イマジカインフォス)は、寂しさや不安を抱えている人の心を落ち着かせてくれる言葉が詰まった1冊だ。

 本書は、現役キャバ嬢である著者・きほ氏の実体験から考える感情やコンプレックスとの向き合い方、人との付き合い方が綴られている。きほ氏は愛媛県出身の27歳で、六本木「JUNGLE TOKYO」に在籍する 現役のキャバ嬢だ。その圧倒的なビジュアルで「可愛すぎるキャバ嬢」としてSNSで話題になり、SNSの総フォロワー数は30万人を超えている。

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 “可愛すぎる”とまで言われる著者が考えていることは、私たちと何が違うのか? 実際に本書を読んでみると、 きほ氏が自分自身の性格や育ってきた環境を客観的に分析しつつ、周囲のことをよく観察している人だということが窺える。本書では、相手との適度な距離や接し方や気持ち・考えの伝え方について、著者がどう考え、行動しているのかが言語化されている。

 例えば、第4章「1割では少なくて、3割では多すぎる」にはこんなことが書いてある。

“キャバクラのお客様に限らず、自分の意見が10割正しいと思っているような人(なぜか年配の男性に多い)と話をすると、自分の正しさを過信するとこんなにも狭量になってしまうんだな、と感じる。自分はこうはなりたくないなって。
 だから、相手と真っ向から意見が対立した時は、強く反論するよりも「2割くらいは正しいかも」と思ってみる。一瞬「なんだこいつ。何言ってんだ、おかしいだろ」と思うような意見だったとしても、「その見方もありかも」くらいには。”

 伝わらない相手に対して真正面から向き合うのは大変だから「2割だけなら取り入れてみよう」という考え方は、自分の心を守りながら世間を上手に渡っていくためには必要だ。

 また、著者の孤独や寂しさに対する向き合い方も独特だ。第7章「夜、寝室にいるときは、誰だってひとりぼっちだ」のなかに、こんな言葉がある。

“人間は、本質的に孤独な存在だと思う。家族だって恋人だって、四六時中ずっと一緒にいるわけにはいかない。LINEの既読が付くまでは相手と繋がっていないし、一人で寝室にいるときは誰でもみんなひとりぼっちだ。
 だからって、孤独だと思わなくていい。寂しい夜は、寝るほかない。それ以上、考える必要はない。”

 夜の仕事をしている著者が「夜、寝室にいるときの寂しさを、誰かと会うことで時間を埋めたりせず、寝ろ」と豪語するのだから、思わず笑ってしまう。 こういう節々から著者があっけらかんとさっぱりした人柄であることが伝わってくるし、若い女性から支持を得ているのもうなずける。素直な人のシンプルな考え方は、人の心にまっすぐに届くのだ。

 本書で著者が一貫しているのは、「自分が大切にしたいと思う人やもの、感情にはきちんと向き合う。でも向き合う必要のないものは気にしないし向き合わない。向き合う義理もない」という姿勢だ。その姿勢は、自分のなかで大切なものは何かを分かっている人にしかできないことだ。だからこそ他人と自分を比較するのではなく、自分の内面を知る努力が大切だと本書では伝えている。

“人から見てどんなに幸せそうでも、自分が不幸だと思っている限り不幸は続くし、どんなに厳しい境遇にいても、自分が幸せだなって思っていれば幸せ。”

“私たちも、自分が主人公の物語の中で、それぞれが幸せになるストーリーを作っていくしかない。”

 自分にとっての幸せとはなんだろう。新作のコンビニスイーツが食べられて幸せ、仕事が予定通りに進行できて幸せ、部屋の片づけができて幸せ、ダイエットできて幸せ…そういう幸せの積み重ねが、未来の自分を救うことにもなる。他人を羨んだり妬んだり、孤独を感じている時間は忙しい私たちには無いのだ。

 理不尽で生きづらい世の中を生きる私たち。しんどい気持ちを抱える若者たちのさまざまな感情や悩みに、本書はお守りのように寄り添ってくれるだろう。

文=鈴木麻理奈

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