【第30回電撃小説大賞《大賞》受賞】罪人の魔女と正義の捜査官の奇妙なバディが魔術犯罪に立ち向かう!『魔女に首輪は付けられない』

文芸・カルチャー

公開日:2024/2/9

魔女に首輪は付けられない
魔女に首輪は付けられない』(夢見夕利/電撃文庫//KADOKAWA)

 今年で30年の歴史的な節目を迎えるライトノベルの登竜門、第30回電撃小説大賞。応募総数4467作の栄えある頂点に輝いた《大賞》受賞作『魔女に首輪は付けられない』(夢見夕利/電撃文庫//KADOKAWA)は、魔術が普及した異世界で魔術犯罪を取り締まる捜査員が、特殊な嗜好を持つ魔女たちとバディを組んで凶悪事件に立ち向かうクライム・サスペンスだ。

 かつて貴族階級が独占していた魔術の大衆化は、凶悪な魔術犯罪の増加によって治安の悪化を招いてしまう。そこで、皇国を統治する「二大貴族」は、対策として魔術犯罪捜査局を組織した。皇国首都イレイルの捜査局に勤める青年ローグ・マカベスタは、捜査員として数々の事件解決の功績を評価され、〈第六分署〉への転属を命じられる。しかしそこは大罪を犯した魔女たちを犯罪捜査に活用する特殊チームだった。巷を騒がす連続殺人犯〈奪命者〉の捜査を命じられたローグは、魔女たちと捜査を開始することに……。

 魔術と融合することで不老となり数千歳を生きる存在が魔女だ。彼女らの多くは異常な精神性を持ち、強大な魔術で都市を壊滅させ、数千人を殺害した罪で服役中の囚人だったが、特例措置として犯罪捜査に協力する見返りとして恩赦の希望を与えられていた。

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 一般人に危害を加えないように魔術を制限する〈首輪〉を付けているが、野放しにすれば新たな災厄を招きかねない。

 ローグに与えられたのは、そんな危険な魔女たちの手綱を握り事件解決に役立てよという難題だった。

 新参者であるローグに好意的ではない魔女たちのなかで、人形のように美しい少女ミゼリアだけが協力的だが、人間を操り人形に変えてしまう精神魔法の使い手だった。捜査のためミゼリアと組むローグだが、言葉巧みに人を堕落させたり、破滅させたりしようとする彼女の悪趣味な言動に翻弄される。

 凶悪犯を相手にお互いの命をあずけ合う相棒ではあるが、犯人以上に緊張感を強いられる相棒との掛け合いが読んでいてハラハラさせてくれる。

 しかし魔女であっても人間として接し、ときに身体を張って守ろうとするローグの行動に魔女たちの評価や態度も変わっていく。

 人を殺さないと眠れなかったり、人を裏切ることで幸せを感じたりと、魔女本人にも抑えがたい衝動があることをローグも理解するにつれ、お互いに奇妙な信頼関係が芽生えていく。

 実力でのし上がった凄腕の捜査官なのに、どこかお人好しなローグに好感を抱き、狂気的な嗜好を持った魔女ではあるが、ミステリアスで老獪なミゼリアのキャラクターに引き込まれる。主人公とヒロインがお互いにキャラクターを魅力的に引き立てているのだ。

 ローグとミゼリアが捜査を進める間にも殺人鬼〈奪命者〉は犯行を繰り返す。転移魔術で人目のつかない路地裏や廃墟を逃げ回る犯人をいかに追い詰めていくのか。ローグとミゼリアの決死の逮捕劇、待ちうける驚愕の結末をぜひ読者となって確かめて見てほしい。

文=愛咲優詩

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