つみたてNISAにも毎月5000円で良い。なるべく簡単に実行できる、個人にとっての資産運用の具体的方法『ほったらかし投資術』

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公開日:2024/3/20

【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術(朝日新書)
【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術(朝日新書)』(山崎 元、水瀬 ケンイチ:著/朝日新聞出版)

 周囲で「投資」という言葉を見聞きすることが増えてきた。投資をしていない人の中には、正直気にはなっているものの、何から手をつけてよいかわからず、なんとなく先延ばしにしている、という人がいるのではないだろうか。

【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術(朝日新書)』(山崎 元、水瀬 ケンイチ:著/朝日新聞出版)は、2010年に出版した『ほったらかし投資術』、2015年に改訂した『全面改訂 ほったらかし投資術』がベストセラーになったことを受け、「ほったらかし投資術」の公式本を目指した一冊。本書は「アドバイスに支払う手数料は、この本の購入価格で終わりにしましょう!」と言い切っている。投資初心者には心強い。

 さて、タイトルである「ほったらかし投資術」からもなんとなくわかるかもしれないが、本書が定義する「ほったらかし投資術」とは、

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「プロが考える最善の運用に大きく劣らず、なるべく簡単に実行できる、個人にとっての資産運用の具体的方法」

 と説明する。具体的には、インデックス・ファンドと呼ばれる運用商品を使う方法を、初心者が知識のない状態から始められるまで、ごく詳細に説明している。

 さて、投資を始める前に、本書は投資と上手く付き合えない3パターンの人を挙げている。

1 投資を始める人が億劫な人
2 投資を続ける胆力がない人
3 上手くやろうとして動き過ぎる人

 本書はズバリ、人が投資を始めない事情として「始めるのが億劫だから」という理由が多いと述べている。要領がわからないので気後れする、手続きが面倒臭い、損をしたら将来後悔するのではないか…。様々な理由がありそうだが、本書は「リスクはあるとしても、期待できるリターンが十分魅力的なら、投資はできるだけ早く始める方がいい」と、私たちの背中を押してくれる。例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)に毎月5000円、つみたてNISAにも毎月5000円といった規模でもよいらしい。「投資を始めた」「投資する仕組みを作った」という事実をまず築き、それを止めないことが肝要だと本書は述べる。

 本書は、このように投資を始める前の心構えや、投資を続けて変わる自分の未来などのビジョンを示しながら、私たちを投資の世界へと誘ってくれる。そして、メインとなる投資術については、先に紹介したインデックス・ファンドを使う方法の説明に力を注いでいる。

 詳しくはぜひ本書に当たってもらいたいのだが、本書が行き着いたインデックス投資における銘柄のファイナルアンサーは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」である、と明かしている。運用会社は三菱UFJアセットマネジメントであるこの投資銘柄は、日本、先進国、新興国を含む全世界の株式市場にこれ一本で丸ごと投資できる商品であるそうだ。この商品は、いわば世界中の投資家たちによる「評価」の総意が大きく影響するものであり、これを買うだけで投資できることの有利性を問いている。本書の実行マニュアルとしては、これに無リスク資産も組み合わせる。

 本書は、投資にリスクが無いとは述べない。「3分の1の損」と「4割の儲け」という広い範囲で1年間変動しながらも、「平均的な投資のリターンは年率5%だ」と考えた上で運用する。本書が強調するのは、「投資は勝ち負けではない」「売り買いすることではなくて、持っていることが投資だ」という2つのポイントのもと、淡々と投資を続けることが大切。これを実践した著者は、実際にコツコツと20年の運用を経て、約1億円の資産を築くことができたと明かしている。

 1億円の資産形成も1円から始まる。本書を読むことで、その第一歩を踏み出せるかもしれない。

文=ルートつつみ@root223

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