夫婦生活の回数を報告させる姑、頼りにならない夫、成果が出ない不妊治療… 不安だらけの長男の嫁のリアルな日々

マンガ

公開日:2024/3/16

長男の嫁ってなんなの

 自分の親や義理の両親から「早く孫の顔が見たい」とプレッシャーをかけられ、辛く苦しい思いをしている人も少なくないのでは? 子どもは欲しいと思った時に授かれるものではない。ただでさえ、妊活への焦りを感じているところに、周囲からの期待も寄せられてしまっては、その重圧に押しつぶされそうになるだろう。

長男の嫁ってなんなの?』(ツムママ/KADOKAWA)の主人公である立花つくしもそのひとりだ。長男の嫁になったつくしは、姑からの嫌味、姑に逆らえない夫。誰にも頼れず、不妊に悩み、振り回されている。もし、“孫プレッシャー”を感じているのであれば、彼女の姿に痛いほど共感し、励まされるだろう。そうでない人も、理不尽な姑からの攻撃に向き合う彼女から勇気をもらえるに違いない。

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 夫・ひろしと結婚してから4年半。つくしは未だに子どもができないことに悩んでいた。夫は長男で、「家業を継ぎたいから実家のそばに住んで欲しい」というのがプロポーズの言葉だった。そんなことを言われたら、自分より実家優先なんだとモヤモヤしてしまう。それでもつくしは姑と同居しないことを条件に結婚を了承したのだったが……。

長男の嫁ってなんなの

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 引っ越し先は義実家の離れで、しかもつくしは事前にそれを知らされていなかったのだ。事前に伝えたら嫌がられるのが目に見えているので、夫はわざと黙っていたのではないかと邪推してしまう。

 にこやかに出迎えてくれた姑だが、夫がいなくなった途端に態度が急変。さらに離れには台所がなく、つくしはこの先毎日姑とともに食事を作らなければならない状況に。初日からこの調子では先が思いやられる。つくしは耐えられるのだろうか……。

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 つくしの不安は的中。姑からの小言に耐える日々が始まった。それでもつくしが頑張るのは、夫に見捨てられたらひとりぼっちになるからだ。物心ついた時には既に父親が他界しており、女手一つで育ててくれた母親も病気で亡くした。天涯孤独になったつくしに寄り添ってくれたのが夫だった。

 理不尽な嫁いびりにも耐える健気なつくしの姿には胸が締め付けられる…。

長男の嫁ってなんなの

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 姑の嫁いびりは料理についてだけではない。なかなか子どもを授からないことにも、文句を言われてしまう始末だ。毎日毎日「孫はまだなの?」と言う姑に嫌気がさしているつくしは、姑に注意してくれない夫にも怒りを覚えるようになっていく。

長男の嫁ってなんなの

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 嫁は立場上、姑に対して本音を言いにくい。そんなとき、夫が間に入ってくれたらと願うのは妻としては当然のことだろう。しかし自分の親に甘い事なかれ主義の夫は少なくない。そうなると、初めは姑にのみ向いていた怒りの矛先が、自分を守ってくれない夫にも向くようになるのだ。姑に逆らえない夫にも腹が立つつくしに、強い共感を覚えた。

 不妊治療を始めて半年たってもタイミング療法の成果が出ず焦るつくしだったが、さらに追い討ちをかけるように姑の言動はエスカレートしていく。

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 姑はついに夫婦関係の回数についても報告を求めるように。デリケートな話題もずけずけと聞いてくる姑の気持ち悪さは、ドン引きして思わず鳥肌が立ってしまうほど。言うのが恥ずかしいならノートに書けというが、問題はそこではない。

 ノートなんか書く必要はないと言ってくれた夫だったが、一緒に病院に行こうとしてはくれない。男なのに産婦人科に行くなんて恥ずかしいと思っているのかもしれないが、治療は恥ずかしいことではない。理不尽に責められ嘲笑されているつくしの現状を変えてあげたいとは思わないのかと腹が立つ。

 事なかれ主義の夫に、ついにつくしの不満が爆発する。

長男の嫁ってなんなの

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 リアルなストーリーと心理描写が魅力の本作。姑との関係構築は、多くの夫婦が不安を抱えるテーマだ。本作で描く問題は、姑の嫁いびりだけではなく、その姑に逆らえない夫や近所の人の噂話など、周囲の環境にまでこまやかに描かれている。本作が切り取るつくしの日常には、家族関係とは本来どうあるべきなのか、考えさせられる点が多い。不妊に悩む人はもちろん、そうでない人にもきっとどこかにシンパシーを感じるシーンがあるだろう。

 不妊の原因を突き止めることはできるのか。子どもを授かり姑との関係が改善される日は来るのか。夫婦の行く末を、ぜひその目で確かめて欲しい。

文=桜木優子

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