小学生が拾ったのはキレイな女子高生!? 「おいしい!」はみんなを笑顔にする『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』

マンガ

公開日:2024/3/19

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

 誰かのために食事を作り、誰かと一緒に食卓を囲む。家族がいれば当たり前に思えることも、実はそうではないことも多い。『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』(秋津貴央/竹書房)は、ごはんを作る人も食べる人もそして読む人をも笑顔にするハートフルグルメマンガだ。


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 娯楽のない田舎で父親とふたり暮らしの五十嵐舞(いがらしまい)は、料理が大好きな小学5年生。いつものように食材を買って家に帰った舞が家の前で拾ったのは、なんと女子高生!

 都会の雰囲気をまとった見ず知らずの女子高生を、持ち前の“おかん力”でお世話する舞。何も話そうとしない謎の女子高生に対し、舞が考えたのは餌付け!ならぬ美味しいごはんを食べさせること。舞のごはんにすっかり手懐けられてしまったクールで人見知りな女子高生、三家環(みつやたまき)。「いっそこのまま飼えちゃったらいいのに」そうして、とにかく可愛いふたりの「飼育ごはん」が始まった!

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

受け継がれる大切なもの

 マイペースでクールでツンデレ猫のような環に「タマ」とあだ名を付け、お世話をすることにした舞。家を出てひとりで生活するため高校へ通いながら小説を書くタマと、帰りが遅い父親とふたり暮らしの舞は、他の人には内緒で夕飯を一緒に食べることに。

 そこで振る舞われる舞の料理は想像以上の腕前! アイラップを使いこなし、掌の上で豆腐を切るのもお手の物。吹きこぼれ防止にスプーンを入れるなど、小学生とは思えぬ“おかん力”には、タマじゃなくても目をキラキラさせながら舞の料理姿に見入ってしまう。

 昔、舞が母親と一緒に作っていた姿が目に浮かぶほど。舞の言動の端々からは母の愛情が感じられる。舞のおかん力はお母さんの料理を大事にし、ちゃんと作りたい気持ちの賜物なのだ。

 舞と一緒に作ったり食べたりするうちに「いつものやつみたいのができていくって嬉しいなぁ」と思うタマ。食べる人の「おいしい!」が料理の原動力となり、また作ろうと思うもの。そうやって作って食べてを繰り返すうちに、いつものお母さんのごはんが、舞とタマの「いつものやつ」となり、舞が大切にするお母さんの味も愛情も消えることなく受け継がれていく。

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

 友達、姉妹、母娘、恋人、家族、ペット…ふたりの関係にうまく名前は付けることはできないけれど、頼られて甘えられて、お互いを思いあえる居心地がいい特別な存在であることは間違いない。楽しそうに料理をする舞と、美味しそうに食べるタマ、そんな可愛いふたりを見て幸せになる読者。みんなを笑顔にさせる三方良しのグルメマンガだ。

舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。

 現在4巻まで刊行されている本作。4巻のラストで舞の父親が初登場し、父親と接する舞から知らなかった一面が見えてくる。そして「これからは夕飯も一緒に食べられる」という父親の言葉に焦るふたり。ふたりの秘密の「飼育ごはん」はどうなってしまうのか。ついつい笑顔にさせられる、ふたりの美味しい時間をずっと見守っていきたい。

文=ネゴト/Ato Hiromi

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