読むと友達に連絡したくなる絵本3選。絵本作家ひろたあきらが選ぶ“大人に読んでほしい絵本”

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/11

初めまして。絵本作家のひろたあきらです。友達って曖昧な存在ですよね。一回会って、インスタだけ繋がってて、お互いなんとなく生活を覗き合ってるだけの関係も、友達なのでしょうか?はたまた、小中学生の頃にいつも一緒に遊んでいて、卒業以来20年以上会ってない人は、もう友達じゃないのでしょうか?

大人になると、新しい友達ってなかなか増えないものですね。私も、いつも同じ友達とばかり遊んでいます。私には、安田という15年以上の付き合いになる、非常に親しい友達がいます。家も近所に住んでいて、私にとっての友達の役割を、安田がほぼ一人で担っていると言っても過言ではありません。安田がいないと思うとゾッとします。

あなたにはどんな友達がいますか?今回は『友達』をテーマに、3冊の絵本を紹介します。

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『ぼくのともだちカニやまさん』

ぼくのともだちカニやまさん
ぼくのともだちカニやまさん』(ニシワキ タダシ/PHP研究所)

友達の定義って、何でしょうか?大人でも、即答できる人は少ないと思います。そんな難しい問いに、とても納得できるシンプルな答えを教えてくれる絵本があります。それが『ぼくのともだちカニやまさん』です。

misoshiruと書かれたロンTを着ている少年『みそお』の前に、ある日突然、カニのような人『カニやまさん』が現れます。カニヤマさんは、みそおの目の前に現れるやいなや
「ともだちに なってください」
と、ほぼ蟹のハサミの手を差し出します。この状況が、実際に起こったらどうしますか?私は正直、キャパオーバーで引いてしまうと思います。みそおはというと、割と冷静に
「きゅうには ムリだよ」
と言って、手を挟まれないように後ろに隠します。みそおはしっかりした子ですね。それを聞いたカニやまさんは
「じゃあ、こうしましょう。こまったことがあったら いってください」
と言います。それに対してみそおは、何か食べたいと答えます。するとカニやまさんが突然、手からギラギラしたビームのようなものを、落ちてる葉っぱに向かって出したのです。

さすがのみそおも、カニやまさんの行動にかなり驚いています。そして、ビームをくらった葉っぱは、味付け海苔に変わりました。お腹が空いて困っているみそおのために、カニやまさんは葉っぱを味付け海苔に変えたのです。みそおのお腹は決して満たされませんが、カニやまさんの優しさに心は満たされたはずです。

みそおは「やるな!」と思いながら、その味付けのりを食べました。この凸凹な二人が助け合いながら、少しずつ友達へと近づいていきます。そして、絵本を読み終わる頃には、友達とは?という大きな問いに、一つの答え教えてくれるのです。

私も、安田に助けられっぱなしの毎日です。安田にとって、カニやまさんの様な頼れる存在でありたいものです。

『むねがちくちく』

むねがちくちく
むねがちくちく』(長谷川 集平/童心社)

親しい友達でも、距離が近いからこそ、すごく小さなことで腹が立ったりもします。

私も、安田と一緒に出かけると、いつも交通系ICカードのチャージが足りないことに腹が立ちます。自分も気づかないところで、安田に対して小さなイライラを与えているはずです。親しき中にも礼儀ありだと分かっているつもりでも、意外と無礼な発言をしてしまってたりします。

むねがちくちく』は友達との付き合い方で、とても大切なことを教えてくれます。主人公の女の子『わたし』と、その友達『リリちゃん』が、とても些細な理由からすれ違いを起こしてしまいます。

金曜日の学校の帰り、二人はある約束をして家に帰ります。日曜日の朝、わたしはお弁当を二人分作って、約束の11時に動物園の前で待っていました。しかし、リリちゃんが一向に現れません。40分待っても現れず、わたしは家に帰り、リリちゃんの携帯電話に電話をかけました。するとリリちゃんは、腹を立てながら水族館の前で待っていました。わたしは、牛を見に行くと思い動物園で待っていて、リリちゃんは、ウミウシを見に行くと思い水族館で待っていたのです。二人は言い合いになり、リリちゃんは電話を切ってしまいました。そしてわたしは、号泣しながら二人分のお弁当をちょっとだけ食べるのです。

絵本のタイトル通り、めちゃめちゃ胸がちくちくします。どっちが悪いでもなく、ちょっとしたすれ違いで、お互いを傷つけ合ってしまうことって、大人になってもありますよね。そういう時に、すぐに謝ることができればいいのですが、自分は悪くないとムキになって、なかなか謝れない大人もたくさんいると思います。

この絵本では、謎のおじさん『たかおじさん』がわたしに最高のアドバイスをしてくれます。このたかおじさんが、渋くていいんです。たかおじさんの当時シーンは、必見です。

『ハルにははねがはえてるから』

ハルにははねがはえてるから
ハルにははねがはえてるから』(大前 粟生、宮崎 夏次系/亜紀書房)

友達になら多少の迷惑をかけるべきだと、私は考えています。悩みを聞いてほしかったらいつでも聞くし、引っ越しの手伝いだってするし、寝込んだ時は物資も届けます。

私も安田には甘えっぱなしだし、安田も時に私に甘えています。私の仕事の打ち上げに、全く関係のない安田もノコノコ付いてきて、誰よりもただ飯を食いただ酒を飲んで帰ることがよくあります。でも、友達なんだから支え合うのが当然です。

ハルにははねがはえてるから』でも、かなり特殊な4人組が支えながら暮らしています。様々な特殊能力を持った、ハル、ナツ、アキ、フユの4人が、お互いを傷つけ合いながらも寄り添い合います。ある時突然、ハルに羽が生えます。ハルが空を飛んでいると、その姿をナツが寂しそうに見ています。それを見たハルは、ナツが寂しくないように、もう飛ぶのをやめます。

ナツというと、目からビームがでるようになります。アキをいじめる人に向かって、ビームを放ちますが、それを見たアキは怖がってしまいます。ナツはアキが怖くないようにずっと目を閉じることにします。

このような具合でお互い少しずつ迷惑をかけながらも、相手に寄り添う4人の姿が描かれていきます。全く個性の違う4人ですが、とても絶妙なバランスで、一人でもかけたらだめな気がします。私たちの日常も、そうかもしれません。自分の周りにいる友達も、みんな自分にとって必要な存在なんだと思います。この絵本を読むと、とても歪な関係だけど、綺麗な友情を感じることができます。

この3冊を読めば、今よりももっと友達のことを大切に思えるはずです。いつも一緒にいる友達に感謝を伝えたり、最近会っていない友達に連絡したくなるかもしれません。私もこの場を借りて、安田に日頃の感謝を伝えさせていただきます。安田、いつもありがとう。

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