超能力で何でも解決? いやいや、そんなに甘くない

小説・エッセイ

2013/9/19

増山超能力師事務所【電子版限定特典付き】

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:誉田哲也 価格:1,337円

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『ストロベリー・ナイト』でぐちゃぐちゃどろどろの猟奇殺人事件を描き、『武士道シックスティーン』で瑞々しい青春スポーツ友情ものを描いた著者が、更なる別の顔を見せた。ユーモアミステリだ。しかも超能力だ。主人公は超能力師だ。何だそれは。

舞台は、超能力の存在が公式に認定された世界。能力の測定方法も確立され、国家試験に合格すれば「超能力師」になれ、2級超能力師以上は超能力を使った仕事ができる。つまり「超能力師」が、弁護士や看護師のように職業として成立しているという設定なのだ。そんな超能力師4人を擁するのが増山超能力師事務所。物語は連作短編。事務所の所員や関係者が持ち回りで主人公を務める。

増山超能力師事務所の仕事は、超能力を使っての探偵事務所のようなもの。第1話では浮気調査、第2話では人探しといったように、事件そのものは普通の興信所と変わらない。けれど手法が違う。残留思念を読み取ったり、テレパシーや透視能力を使って調査するのである。あ、あなた今「じゃあ何でもありじゃん、何だってできるじゃん」と思いましたね? いやいや、そう簡単にはいかないあたりが本書のミソ。

超能力という、ともすればいくらでも恣意的になれる設定にリアリティを持たせるため、著者はとことんディテールを煮詰めた。残留思念は素材によって残り方が違うとか、人によって能力には差があるとか、2級超能力師の試験勉強の内容とか。テレパシーなんかなくても海千山千のおばさんには人の恋心なんかお見通しというエピソードもいい。つまり、超能力とは、語学ができるとか料理が上手いとかと同様、人の個性であり特技であるという位置づけだ。

なぜそんな設定にしたか。本書の最大のテーマが、「マイノリティ」の葛藤にあるからに他ならない。望んだ訳でもないのに超能力を持って生まれてしまい、偏見を持たれたり避けられたりした彼ら。しかし超能力をひとつの技能として認め、社会の中で認知することにより彼らは社会と共存できるようになった。超能力者というやや現実離れした(しかもコミカルな)設定は、実は今も社会からはじかれがちなさまざまなマイノリティのメタファなのである。ここには、そんなマイノリティをマイノリティたらしめている「もの」を、社会がちゃんと認め、制度や受け皿を整備することで、偏見や思い込みによる差別は減らせる。彼らが普通の暮らしを送るという当たり前のことが可能になる。

わははと笑いながら読み、けれど読み終わったときには深く考えさせられる。これはそんな物語である。これは響くぞ。だって増山超能力師事務所の面々は、そのテレパシー能力でもって、読者の心中に直接語りかけてくるのだから。


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