「報道したことは本当に正しかったのか?」松本清張が描き出す記者の苦悩!

小説・エッセイ

2013/10/21

疑惑

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:松本清張 価格:576円

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記者の仕事は、森羅万象から真実を切り取ることにある。「切り取る」ということは、他のものを「切り捨てる」ことと同義だ。本当は何が正しいかも分からないこの世の中で、記者は真実を追い求めなくてはならない。だが、それには、いつだってリスクが伴う。しらみつぶしに取材を重ね、覚悟を決めて記事を書くとはいえ、自分が書き立てたことが本当に正しいのか、時間が経てば経つ程に不安に苛まれることもあるのだろう。

『疑惑』は松本清張作の名作推理サスペンス。2012年11月には常盤貴子、尾野真千子主演でドラマ化された他、過去に4度もテレビドラマ化をされている。1982年の作品でありながらも作品は色あせることなく、未だ人気は高い。描かれているのは、ある事件を巡る記者の苦悩。自分の記事に自信満々だった記者が次第に追いつめられていくさまは手に汗握る。

ある大雨の日、鬼塚球磨子と夫・白河福太郎の乗った車が海へ突っ込み、夫が死亡する事件が起こった。球磨子は車から脱出して助かっていたが、保険金狙いの殺人を疑われ、警察に逮捕される。記者・秋谷茂一は、球磨子の前科を暴きだし、「稀代の悪女」と書き立て、日本中を球磨子の犯行を疑わないムードにさせた。このような状況の中で、佐原卓吉が国選弁護人に決定。球磨子の犯行を確信する記者の秋谷は、佐原に状況を覆す力はないと高をくくっていたが…。球磨子は本当に殺人犯なのか? 両者の戦いから目が離せない。

国選弁護人として仕方なく事件を担当したはずの佐原は冷静に事件と向き合う。球磨子は犯人だろうとそうでなかろうと、決して同情出来るような人間ではない。だが、状況証拠以外、彼女が犯人だと指し示すものもない。佐原は「疑わしきは罰せず」を目指すのではなく、彼女の無実を信じて動き出す。徹底した取材から球磨子が犯人だと確信していたはずの秋谷が追いつめられていく姿には読んでいるこちらまでハラハラさせられる。

明治の藤田組贋札事件を描く「不運な名前」も併録。読書の秋、スリルを味わいたいアナタに読んでほしい1冊。


豪華2本立て

現場に残されたスパナの意味とは

報復に来る可能性が高いことにおびえる記者

状況証拠的には犯人は球磨子で間違いないのだが…記者の運命はいかに!
(C)松本清張/文藝春秋