目指せ、漫画賞受賞!少年達の父親への反発と葛藤

公開日:2013/12/8

G戦場ヘヴンズドア(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:日本橋ヨヲコ 価格:432円

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恵まれた家庭に生まれ育ったという事実がコンプレックスになることもある。どんな家庭でも親に大事にされていないという誤解は付き物だし、疎外感を覚えれば覚えるほど親に認められようと焦りを募らせるのも子どもの性だ。その焦燥は時に憎しみに姿を変え、人間を突き動かす原動力となる。『G戦場ヘヴンズドア』の主人公達も親の影を追いながらもがき苦しむように漫画を書きつづける。『少女ファイト』や『プラスチック解体高校』などで名高い日本橋ヨヲコ著の本作は、魂を揺さぶられる程、少年の苦悩、孤独、才能への嫉妬を描き出している。

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人気漫画家の父に反発するようにひそかに小説家を目指していた堺田町蔵は、転校した高校で、天才的な漫画の才能を持つ長谷川鉄男と出会う。まるで正反対の性格の2人だが、ひょんなことから町蔵の小説を読んだ鉄男から合作漫画を描くことを提案された。町蔵は憎き父親に自らの才能を知らしめたくてたまらない。一方で、鉄男も、幼い頃、家を出て行った敏腕編集者の父親に自分の才能を認めさせるため、そして、病床に伏した母親の入院費のために何としても漫画賞を受賞する必要があった。2人は漫画賞を取ることが出来るのか? 父親と分かり合える日は来るのか? 町蔵と鉄男の葛藤は続いていく。

漫画賞受賞を狙う物語といっても、本書は「競争」や「結果」を主眼とはせずに、「自分たちが震える作品を描こう」とする中で主人公達が成長していく姿を中心として描かれている。もしかしたら大切なのは勝負に勝つことではないのかもしれない。自分自身との葛藤の先に見えた景色こそが少年達を成長させ、新たな世界へと導いてくれるのだろう。

「君達は君達にしかなれない。君達が描く必然が無いマンガなどいらない。 マンガは練習するもんじゃない。覚醒するものだ。」
「これは仕事。本気でうそをつく仕事なのよ。あなたの描くうそは、誰かがお金を払ってでも騙されたいものかしら?」

全3巻という決して長くはない作品の中で日本橋ヨヲコは自身の漫画への熱い思いを登場人物達の台詞に荷担させていく。作品を生み出すとはこんなにも自分自身と向き合い続けなくてはならないものなのか。登場人物の台詞が胸に響き渡ってくる。この本は少年少女よりも、ぜひ、全ての大人にこそ読んでほしい1冊だ。


一緒に漫画を書こうと鉄男に提案される町蔵(1巻)

鉄男の作品を見て、やる気になる町蔵(1巻)

漫画を書くことにハマっていく町蔵(2巻)

他の登場人物達も魅力的だ(2巻)

最後の場面まで目が離せない(3巻)