「ほんとうに」空を飛ぶ浮遊感にあふれた、少女の成長物語

小説・エッセイ

2014/2/8

魔女の宅急便

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:角野栄子 価格:583円

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 宮崎アニメのもっとも魅力的な点は空を飛ぶことだ。それもただ飛ぶのではなくて、滑空という、あたかも無重力を思わせる飛行のイメージにその中心はある。

 『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』はもちろんのこと、『となりのトトロ』の猫電車、『千と千尋の神隠し』のハクの飛び方、そうして『風立ちぬ』の紙飛行機を思う時、その感覚はいっそう強まるはずだ。

 昔、フォークグループ「赤い鳥」に「翼をください」というリリカルな歌があったが、誰もが空を飛びたいと例外なく焦がれているのではないだろうか。

 だが実際には、人はとっくに空を飛んでいる。海外旅行の経験を持つ人は多いわけで、飛行機に乗って私たちは何度となく空を飛んでいるではないか。けれどそれは、「ほんとうに」飛んでいるのではない。それはただ「移動」しているにすぎないのだ。ハングライダー、スカイダイビング、も言うに及びない。「ほんとうに」空を飛ぶとは、体が重力から解き放たれる状態を言うのではないだろうか。その手ざわりをありありと味あわせてくれるのが、現在の世界には宮崎駿ただひとりの才能だと私は思う。

 『魔女の宅急便』もジブリによってアニメ化されている。「飛ぶ」というのがこの作品の重要なテーマのひとつだからだ。

 魔女の血筋を引く少女キキは、10歳をすぎた頃、あとの人生を人間として生きるか、魔女になるかを決めなければならなかった。キキは魔女として成長することを選び、14歳のある月夜の夜、1年間のいわば研修として両親から離れてよその町に住み、人間と共存する生き方と、役に立つ魔法の使い方を学ぶことになる。キキがついたのは、海辺の大きな町で、パン屋の2階を間借りし、人から人へものを届けるお使いになるのである。出会いを重ね、失敗と成功を重ねつつ、次第に成長していく。

 可愛い魔法使いの少女と、彼女にとって一番心を通わせる友達であるクロネコ・ジジ。体裁は童話だが、小学生や中学生ばかりが楽しめるお話ではなく仕上がっている。ほうきにまたがって空を飛ぶキキ、この浮遊感は格別である。つまりは、作者の描写が映像的イメージをうながすほどたくましいということでもある。

 キキが飛行することによって、あの人からこの人に荷物を届ける時、彼女の飛行跡は縫い針に通された糸のごとく人と人を結びつけていく。飛ぶことは本作の重要なテーマのひとつであるといったのはこのことだ。

 清水崇監督によって実写版も公開される。


キキは出発の日を先延ばしにしていた

とうとうあるきれいな満月の日、キキは旅立つ

キキが着いたのは海沿いの大きな町だった

初めて出会ったのはパン屋のおかみさん

キキ海に行く だがそれは大騒動の始まりだった

頼まれればラブレターも届ける