トッピング全部のせ! 満足感たっぷり、池井戸潤の企業小説

小説・エッセイ

2014/3/25

ルーズヴェルト・ゲーム

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:池井戸潤 価格:864円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 本作内の説明によれば、“ルーズヴェルト・ゲーム”とは、最終的には7−8で決着するような、打点が積み上げられてゆく、追いつけ追い越せの手に汗握るゲームのことで、ルーズヴェルト大統領が「もっともおもしろいスコア」と言ったことが語源だそうです。で、この小説で描かれるのは、コールドぎりぎりのところから、すでに7点取ってる相手を追うようなゲーム展開。かなり冷や冷やさせられます。

 青島製作所という電機メーカーがあり、社会人野球チームを持っているのですが、不況でにっちもさっちも行かなくなり、リストラを断行しなくてはならなくなります。会長が直々に創設した歴史あるチームも解散の危機。しかもライバルの大会社・ミツワ電器に監督とエースと主砲を引き抜かれたばかり。会社は外部のコンサル会社から引き抜かれた社長が運営していて、古参の番頭のような重役とはうまく行っていません。チームのほうには球界ではまったく無名の新監督が入ってきますが、彼の采配はこれまでとはまったく違っていて…と、チームと会社が交互に描かれます。会社は創立以来の危機を乗り越えられるのか? チームはミツワ電器に勝てるのか?

 そこは池井戸作品です。非協力的と見られていた登場人物が意外にもサムライだったりして、ぐっと来るシーンも多々。反対にミツワ電器は、青島製作所から寝返った裏切り者も含め、時代劇の悪役のようにイヤミな奴ばかり。競争だけでなく妨害もしかけてくるのに対して、オセロの駒を一気にひっくり返すかのように、猛反撃するのです。企業小説でもあり、スポーツ小説でもあり、登場人物ひとりひとりの事情と感情が入り組む群像劇。トッピング全部のっかったラーメンのような満足感を味わえることでしょう。

 ところで、この原稿を書くに当たって、4月からスタートするというドラマのキャストも見てみたのですが、あんなにも魅力的だった野球チームの面々についてほとんどまったく書かれていないのです。どうなっちゃうんだろう…。スタッフが『半沢直樹』と同じだったので期待できるとは思うのですが。


野球部員たちは契約社員。チーム解散、イコール生活の危機なのです

会社は株主だけのものでしょうか? 会社が儲かるだけでなく、社員をも幸せにする経営とは。登場人物たちは模索し続けます
(C)池井戸潤/講談社