一夏の出来事を綴った、奇跡のようなドラマ

2014/5/29

赤パン先生! 1

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:安永知澄 価格:450円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 すでに完結している物語なので、全体を通しての話になります。この物語は、表紙のほわほわっとした女の子、伊倉きらちゃん(10歳)の小学校4年生の一夏を描いたものです。もちろんそこでは、タイトルでもある水泳の臨時教師、赤パン先生こと鮎川先生への淡い想いを描いているのですが、これがなかなか一筋縄ではいかない。それは、鮎川先生ときらちゃんの腹違いの姉、庸子さんのことがあるから、とかそういったすぐに思いつくような理由ではないのです。もっと当たり前で、リアルな話です。

 鮎川先生にとって、きらちゃんは水泳の授業で接する機会のある頑張り屋な生徒。それ以上でも以下でもない。そしてきらちゃんも、胸が高鳴る、先生の悪口を言われると頭にくる、ということがあっても明確に恋を自覚することはない。最近のラブコメを見慣れた目で読むと、とても当たり前で新鮮です。まぁ、だいたい夏休みといえば海とか温泉とかに行く回があって、という発想は本作にはないです。

 夏休みには、それまで仲のよかった友だちと疎遠になったり、新しい親友ができたり。きらちゃんの周りにいるのは、鮎川先生との仲を描くために配置された都合のよいキャラクターではなく、きらちゃんが存在しなくてもそこで生活をしているはずの人物ばかりなのです。実際、視点はきらちゃんを離れて、姉の庸子さんと鮎川先生のデートを描くし、それまで親しかった友だちのひふみちゃんは名古屋に遊びに行くことで都会風を吹かせるようになり、きらちゃんとは話題が合わなくなっていく。

 そうして一夏がすぎて、いよいよ水泳の授業も終わろうとする頃、きらちゃんは一回りも二回りも人間として成長しているのです。ぜひ、1巻のやや頼りないきらちゃんと、4巻の特に第29話の扉を見比べてください。止まった絵で見せる、マンガならではの力が感じられるはずです。


お約束気味のはじまりだけど、いい意味で裏切られることになる

きらちゃんのあこがれ、赤パン先生

姉の庸子さんは中学校の先生です

この作品の水の描写は白眉!