『医龍』の作者が描く江戸川乱歩ファン垂涎の本格ミステリーコミック

2014/12/13

幽麗塔

ハード : 発売元 : 小学館
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著者名:乃木坂太郎 価格:※ストアでご確認ください

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 今の小学生は江戸川コナンが大好き。江戸川コナンを入口に、江戸川乱歩やコナン・ドイルを読む小学生もいるとか。私が小学生のとき、友達に熱心な江戸川乱歩ファンがいて、その影響でよく読んだものでした。あのおどろおどろしさ、先の読めない展開、ページをめくる手を止めさせない魔力。トラウマでもあります。

 本作は、女流作家アリス・マリエル・ウィリアムソンの『灰色の女』を黒岩涙香が翻案した小説『幽霊塔』をアレンジしたミステリーコミック。ちなみに、翻案『幽霊塔』を江戸川乱歩がさらに翻案したものも出版されています。作風は、全体的に江戸川乱歩臭がします。紙面から漂う耽美な不気味さや湿り気、心のうちがまったく読めないミステリアスな人物たち、そしてほどほどのグロとホラー。作者が意識したところなのか、ヒット作『医龍-Team Medical Dragon-』に比べて古風な絵柄も手伝い、完全に、江戸川乱歩のあの怪奇小説を読んでいる味わいに浸ることができます。

 作品の舞台は昭和29年の神戸。遡ることその2年前、老女が時計針に括りつけられ惨殺されたことから幽霊塔と呼ばれるいわくつきの時計塔に隠された秘密をさぐる、ニート主人公の天野太一と、頭が切れる謎の美青年・テツオ。幽霊塔を徘徊する殺人鬼「死番虫」。そして、財宝探し。これらの基本設定だけで、ミステリー大作の予感にときめく人は、もう買いです。

 たとえば、ニートでみすぼらしい太一を、幽霊塔の管理人としてどのように採用させるのか、幽霊塔全体の内装修繕をするための寸法取りとサンプル入手をたった3時間でどうやってのけるのか。ニートで単純ドジな太一と、聡明ながらときに冷淡なテツオの奇妙なコンビネーションが秀逸です。ハッと息を飲む絵と展開に、ページをめくる指を止めさせない魔力を、江戸川乱歩ファンならず、広く読者に体験していただきたいと思います。


惨殺劇があったいわくつきの時計台「幽霊塔」

ニートの太一はだらしない日々を過ごしていたが、現状に満足しているはずもなく…

ミステリアスなテツオがどこからともなく登場

おどろおどろしい幽霊塔に乗り込む

ふいのグロとホラーに寒気を覚える