SFをパロディするビックリ仰天の“破格SF”
更新日:2011/11/24
続編の「亜空間要塞の逆襲」とあわせて70年代SFの奇書といわれた小説です。奇書というより遊書といったほうがふさわしいかと僕は思いますが、ま、ともかくあらすじです。
SF好きな4人組のひとり、山本麟太郎の叔父・浄閑寺公等が20数年の行方知れずののち忽然として伊豆の屋敷にあらわれた。どこからどうやってたどり着いたのか皆目見当もつかず、さながら降って湧いたごとくであった。4人組はさっそく現地へ出かけ調査にあたるが、庭に卵大の歪んだ空間が浮かんでいるのを発見、多宇宙へ繋がる亜空間と断定した夜、4人はUFOに襲われ異次元宇宙へ飛ばされる。そこには、ジョーカンジーという名の神が祀られており…。
と、これだけ読めばさながらアドヴェンチャーSFのおもむきなれど、実はこのメインキャラの4人組の名前というのが、山本麟太郎、吉永佐一、伊東五郎、三波伸夫となっておりまして、うしろの2名、これは当時とてつもない人気コントトリオだった「てんぷくトリオ」の伊東四朗、三波伸介をもじっているわけで(なんで3人目の戸塚睦夫さんのもじりが登場しないかというと戸塚さんは早くに亡くなられてしまったのです)、要するにこれはシャレだよと、SFを手玉に大いに遊ぶ趣向の小説なのだよと、パロディともいうのかなと、文化人類学的にはこれを「もどく」というのだよと、いやそんなことはいってませんが、とにかくひとひねりある作品。
読んでいけばすぐ分かりますが4人は出くわす怪現象や謎のオブジェについて、いやはや喋くりあう喋くりあう、それがまたSFというジャンルが生み出してきた先行作品名や「空間のひずみ」といったような概念や、「フラッシュ・フューチャー」めいた事柄まで、山盛りに総動員して見極めていくというお祭り騒ぎを走り抜けていくのであります。ちょいとしたSFファンなら「くだらねェ~」と大喜びする仕掛けです。
最後の章はその名も「史上最大のどんでん返しに遭遇する」。遭遇できるかもしれない、怒らなければ。
4人が麻雀を囲むシーからはじまるのがなんとも70年代的
やがておもむろに、行方不明だった叔父・浄閑寺公等の名前が出て…