今月のプラチナ本 2011年10月号『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』 深町秋生

今月のプラチナ本

2011/9/6

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)

ハード : 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:深町秋生 価格:576円

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今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』

●あらすじ●

冷酷で暴力的、誰もが認める美貌を持つ女・八神瑛子。警視庁上野署組織犯罪対策課に勤める彼女は、3年前に最愛の夫を亡くし、身籠った娘を流産した過去をもつ。夫の死を自殺と断定した警察組織に不信と憎悪を抱きながら、暴力を駆使し、金で同僚を飼い、暴力団や中国マフィアと癒着しながらルール無視のやり方で数々の事件を解決してきた。ある日、瑛子が管轄する区域で暴力団組長の娘が刺殺される。悪徳刑事の排除を目論む上野署署長・富永の監視下のなか瑛子は事件を調べ始めるが、隣の区域でまた、同様の手口で組長の娘に似た女性の刺殺事件が発生する……。危険な女刑事・八神瑛子が躍動する、警察小説シリーズ、誕生!(文庫書き下ろし)

ふかまち・あきお●1975年山形県生まれ。2004年『果てしなき渇き』で第3回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞してデビュー。ほかの著書に『ヒステリック・サバイバー』『東京デッドクルージング』『ダブル』。山形の「小説家(ライター)になろう講座」講師も務める。

『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』
幻冬舎文庫 560円
写真=首藤幹夫

編集部寸評

アウトバーンを疾走する危険で美しいアウトサイダー

人は、社会や集団のルールを守る者と、己の掟だけに従う者の二種類に分かれるという。当然僕たちの多くは前者に属していて、意外に思われるかもしれないがヤクザやギャングも前者に属している。歪とはいえ集団のルールを遵守している存在だからだ。これら前者の立ち位置をインサイド(社会の内)とすると、後者のそれはアウトサイド(社会の外)となる。本書の主人公・八神瑛子の魅力はアウトサイドに立っている点だ。外に立つ彼女から見れば、本来真逆な存在であるはずの警察もヤクザも、内側にいるという点で似たものなのかもしれない。職務には忠実ながら、彼女の心はそのどちらにも与さない。孤独かつクールで、危険な香りが素敵だ。なぜ彼女はスピンアウトしたのか? その理由は今後の続巻で明らかになるようだが、願わくば彼女の逸脱した美しさを予定調和で回収せずに維持してほしい。高クオリティなエンタメ作品だからこそ、今後に期待したい。

横里 隆 本誌ご隠居兼編集人。ダ・ヴィンチ電子部が9月6日に「ダ・ヴィンチ電子ナビ」として生まれ変わりました。内容も大充実! ぜひアクセスください!

女と男には、こうあってほしい

小説でも映像でも、女性刑事たちの活躍がめざましい。そんな中、また新たなヒロインが誕生した。深い絶望を胸に秘め、無表情な美貌を鎧とした八神瑛子。身内であるはずの警察の人間に対しては、弱みを握って自在に操る。敵であるはずの暴力団やマフィアとは、互いの利益をやりとりして利用しあう。彼らが誰にどんな仕打ちをしようが、自分の損にならなければ放置する女だ。そして自らも、容赦なく暴力をふるう。かっこいい、いや、かっこよすぎるくらいだ。もしこの主人公が男性だったら、かっこよすぎて距離を感じてしまっただろう。しかし八神は、時に悲しげで、時に鬼のごとき女性―われわれ男性が憧れてやまない、強い女なのだ。そしてまた、彼女を取り巻く男性脇役陣には感情移入してしまう。弱くて浅はかだけれど、必死な男たち。女と男には、こうあってほしい。そんな願望をエンターテインメントに結晶させてくれた作品なのかもしれない。

関口靖彦 本誌編集長。本書を読み終えたあと、杉作J太郎・植地毅/編著『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』を再読。ちょっと趣きは違いますが……

脇役も個性豊か。男を出し抜く強い女たち

目的のためなら手段を選ばず、悪にも身を染める美貌の辣腕刑事・八神瑛子。この域に到達した彼女の過去が謎めいていることもあって瑛子ばかりに気をとられてしまうが、本作がこれほどおもしろいのは、警察関係者や中国マフィア等の脇役陣もみんなキャラ立ちしていて、彼らにも惹きつけられる強い個性があるからだろう。瑛子を敵対視する上野署署長の富永昌弘しかり、ホステスから福建マフィアの大幹部に成り上がった劉英麗しかり、瑛子のアシスタントとして豪腕ぶりを発揮する元プロレスラーの落合里美しかり。特に劉英麗の残酷なまでの冷徹さと、カンフーの蹴りやパンチにも耐える里美の強靭な肉体とタフな度胸。瑛子と富永の攻防を筆頭に、強い女たちが虚勢を張った男たちを出し抜いていくさまはなんとも小気味いい。3人の女傑は、それぞれに一度は見た夢を捨ててきた。シリーズ化されるとのことなので、今後も魅力的な女性キャラの登場を期待したい。

稲子美砂 文庫『初恋素描帖』が発売に。あとがきに綴られた豊島ミホさんの中学時代に寄せる熱い思いに感動。物語が凝縮された浅野いにおさんの装画にも胸キュン

とにかく瑛子がかっこいい!!

女刑事が主役の小説はあるが、ここまでタフに男と渡り合う女刑事はいないんじゃないか! ? 超優秀な美人刑事といっても、まったく女の武器を活用していないばかりか、暴力、金、暴力団との癒着など、その捜査方法は男顔負けにあくどい。真相究明のためならどんなことでもやる瑛子の強さにしびれた。彼女がいいのはどんなに腐敗や不正に手を染めても、汚れてみえないことだ。その理由は彼女の目的にある。ようやくその手がかりを掴んだ瑛子。続きが早く読みたい!

服部美穂 本誌第2特集は『テニスの王子様』。マンガ、ミュージカル、アニメ……どれも完璧! この世界観はディズニー級です

続編にも期待大

八神が立ち止まるときは死ぬとき! 闇社会をたった一人で渡り歩く八神警部補は、サメのように動かなければ死んでしまうのだ。その先に死が待ち受けていようとも、目的を果たすためならば躊躇なく死へ突き進むのだろう。しかし彼女を突き動かす動機は、いまだ詳しく描かれていない。仲間を売ることや違法行為だって屁にも思わない、ヒールでタフな女刑事の物語を文庫書き下ろしで楽しめるのが嬉しい。最終行の「第一話了」という文字に、いやがうえにも期待が高まる。

似田貝大介夏が終われば……次の『幽』。そろそろ企画会議をしなければ。チャリティイベント「ふるさと怪談」もよろしく!

知性・野性・理性、そして美貌!

タフでクールでかっこいい(美しい)女。世間ではますます強い女が人気のようだ。これまで強い女たちを描いてきた深町秋生は、ニューヒロインに、暴力と危険というふたつの劇薬を調合してきた。目的のためなら手段を選ばない女、それが八神瑛子だ。個性的な登場人物、連続殺人事件の謎、深町作品おなじみの残酷描写にぐいぐい引き込まれあっという間に読破した。序章では語られなかった瑛子の「闇」、瑛子と富永の展開など、すでに今後が気になってしかたがない!

重信裕加 好きなものを無制限に食べていたら、当然ですが太りました。本誌54 Pの『バラ色の聖戦』を読んでダイエットを決意!

早く続きが読みたい!

八神瑛子がスゴイ。暴力、金、そして暴力団や中国マフィアとの癒着。これぞ〝悪徳〞警官!と言いたくなるが、そこには目的のためには手段を選ばず、という強い意志が感じられる。激情を内に秘めつつも、クールで非情。サバサバしていて暑苦しくないのがいい。瑛子以外の登場人物たちも、各々魅力的だ。本作はシリーズの序章。なぜ瑛子は危険な橋を渡るのか。3年前に死んだ夫の秘密とは? 瑛子の魅力と、物語の心地よいスピード感の相乗効果を楽しんでほしい。

鎌野静華 いまさらですが、小豆あん味の「あいすまんじゅう」にハマっています。なんで今まで知らなかったんだろう

彼女を衝き動かすものは何か

明らかに警察社会から逸脱した女・八神瑛子。彼女をここまで衝き動かすものは一体何だろう。雑誌記者の夫(この設定も色々ありそう)の死と流産で、心に深い闇を負った瑛子。アウトバーンとは燃え尽きるという意味とのことだが、第一話の本作で彼女は燃えまくりだ。燃え尽きるのはいつなのだろう。そのとき訪れるのは安息か、絶望か。彼女のこれまでとこれからの物語から目が離せない。上司の富永との、嫌な奴とお互い思いつつ仕事の腕は認めている関係も、好きです。

岩橋真実 『視えるんです。』『同 2』累計 10万部突破&「もしノン」続々重版中。ありがとうございます。幽文最終候補も発表

強い女性は、セクシーだ!

登場する女性たちが、とにかくかっこいい!〝女だから〞っていう言い訳は一切なし、苛酷な状況下でも、決して弱音や不安を口にせずに皆、自分の任務を黙々と遂行していく強さを持っているのだ。そして主人公の八神瑛子は、男に対して媚をいっさい売らないばかりか、残酷な「水責め」の拷問には「これ、効き目あるの?」と非情でもある。なのに、想像するその姿はとってもセクシー! 八神瑛子についてもっと知りたくなる。彼女の過去とは一体! ? 続編が待ち遠しい!

千葉美如 電子ナビがオープン! マスコットキャラクターは森川幸人さんに作っていただきました。ラッコのぶっくらこです

早い! 安い! そして巧い!

会話を中心に淡々と進められるストーリー展開と、各登場人物のわかりやすいキャラ付けが、シーンを鮮やかに想像させ、映像を観ているかのような感覚に。序盤では事件解明のため手段を選ばず、危険を顧みずに戦う美人刑事・八神に肩入れしながら読み進めたが、八神の余りの冷徹さに、中盤は対峙する組織の方を応援していた。そうこう引き込まれているうちに、気付いたら話は終盤を迎え……。早く続きが読みたくなる至極のエンターテインメント小説(560円!)だ。

川戸崇央 最近雑誌の表紙でよく見かけるAKB48の柏木由紀ちゃん。個人的には秋が似合う子だと思うので、これからも楽しみ

ドラマでの映像化、希望!

頭の中で完全に映像化してしまった。夫を殺害(?)され、警察組織に対し敵意を抱く刑事・八神瑛子は……あのカッコいい女優さんで、署内は某ドラマのイメージで……と、勝手に映像として組み立ててしまった世界に、気付けばどっぷり浸かり、一気読みしてしまった。瑛子とさまざまな情報提供者たちとの関係を以って、事件は解決へと結びついていくが、その展開が目新しく、かといって無理もなく、手法のうまさに唸らされた。続編と共に映像化を期待してます!

村井有紀子 本誌特集「大泉洋はBARにいる」を担当。取材・撮影回数、何と8回。大泉さん、ありがとうございました

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