ガラス製の「金色のふくろう」は彼の妻? それとも明日の私?

小説・エッセイ

2011/3/10

ウェイト・オア・ノット/LOVERS

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 祥伝社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:安達千夏 価格:108円

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妻のある男と割り切って恋愛できる女性は、ある意味、大人だと思う。

よほど鈍感でない限り、ふとした男の仕草や言動に、家庭生活=妻との使い分けが透けて見えるし、自制心やわきまえみたいな、本来、恋愛にはそぐわないものに縛られるのだから。

30歳を前にした織江は2年あまり、不倫の恋を続けている。情事の場は男が借りているワンルーム。棚には男が「妻に内緒でコレクションしている」と語る高価なガラス製のペーパーウェイトが飾られている。なかで、ひときわ目立つ金色のふくろうに、織江の目は吸い寄せられる。男はすごく気に入って買ったものにも関わらず、「もし欲しければ、あげるよ」と言う。口紅や妙なしわがつかないよう、逢瀬のうれしさに思わずしがみついた織江を制止して、丁寧に脱いで椅子にかけておいたシャツを着ながら、涼しい顔で。

やっと手に入れたら、別のものがほしくなるのが男のサガ。棚に並んだディスプレイは、彼がかつて抱いた記憶の中の女たちではないか? とりわけ目立つふくろうの大きな目が、織江には妻というポジションに就くことを許された一人の女性の猜疑心にあふれた心象を映し出しているように感じられてならない。名前も顔も知らない男の妻の寂しさや嫉妬を思うとき、織江は次はそれを自分が味わうことになるのを予感するのだ。

堂々と楽しめない恋のせつなさや膿んだ感情が、情事の後先の描写の中にうまく表現されていて、恋する男を冷静に観察する目が表現にリアリティを与えている。お手軽アンソロジーのさらりと読める短編だけど、展開が巧くて心に残る一篇。

不倫に悩む女性はもちろん共感度100%だと思うけれど、冷たく熱い眼光を放つ「金色のふくろう」に自分を重ねて、妻の立場から読んでもせつなすぎる~。

男の借りている部屋で、情事を終えた場面から話は始まる。官能の余韻が漂うベッドの上。「失った、と感じる」という出だし、上手いなと思う

棚に飾られたペーパーウェイトの金色のふくろうに見つめられていると感じる織江。それは猜疑心に満ちた彼の妻の視線…