信頼の道尾ブランド、快感たっぷりのミステリーホラー

小説・エッセイ

2012/1/6

骸の爪

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:道尾秀介 価格:702円

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第5回ホラー・サスペンス大賞を受賞したデビュー作「背の眼」の、シリーズ第2弾といった感じの作品です。道尾作品としてはケレン味がもちょっとほしいけれど、ミステリのレベルでいったら充分読み心地のある満足作。新幹線の中なんかじゃこういうのが読みたいねむしろ、西村京太郎とかじゃなく。集中した読書までは要求しないけど、謎解きのスリルはたっぷりと味わえる。

ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中の仏像工房「瑞祥房」をたずねます。制作途中の仏像がひしめき合う部屋に泊められた彼はその夜、闇の中で、千手観音が口を開けて笑うのを目撃し、何ものかのうごめく気配を感じ、不思議な言葉をつぶやく男の声を耳にします。翌朝には、敷地内に安置された明王が頭から血を流し、駐車場に大書された深紅の「へ」の文字。さらに、仏師のひとりがこつ然と姿を消していました。その謎と恐怖を解明すべく、霊現象探究家の友人、真備とその助手をともなって「瑞祥房」を再訪する道尾でした。やがてふたりめの仏師が消え、工房の天井には血痕らしきあとが…。20年前の呪われた事件との関わりが取りざたされる中、「ふたりはもう生きていない」ともらす先代の房主。浮世離れした人間たちの小さな集団で、事件は複雑奇怪を極めるのであります。

「背の眼」が、ある人物にとりついた個幻想を「語り落とす」というモチーフを強力に打ち出していたように、「骸の爪」でも超常現象や霊現象と思われる不可思議が次々と起こり、しかしそれを理性の力で鮮やかにどんでん返しさせていくいってみれば京極夏彦タッチの世界が展開していきます。探偵役の真備の口から繰り出される、仏像にまつわる数々の蘊蓄も、妖しい魅力を放っているのです。

ぜいたくな苦言を一つだけ呈すると、あやなす謎をむっちりと盛り込みすぎというか、事件の解決の部分が分量的に多いんです。いや、こんぐらがった糸がスラリスラリとほどけていく、それがミステリーの最高の快感ですから、文句言っちゃいけませんが、全然読み疲れしなかったのに、解決編のとこでちょっとあきれたといいますか、あーそうそう、そんな謎も仕込んでありましたっけね、いやあ真面目だなあ細かいとこまで忘れずにって、真面目じゃないミステリー作家なんか嫌だとは思うものの。

というわけで、道尾ブランドの信頼度は揺るぎません。

妖しい目次でそそられて

ページめくってエピグラフでそそられまくり

問題の工房はおっそろしく山深い