登山家はパイオニア精神に溢れ、未知の探究によって、新しい道を開く

平凡社

2012/1/31

登山の文化史

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 平凡社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:eBookJapan
著者名:桑原武夫 価格:648円

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フランス文学・文化の研究者であり、京都大学山岳会の隊長で登山家としても知られる桑原武夫の著。
文化は色々あるが、それぞれの文化で山に対する態度、考えが異なる。本書は、その文化と登山との関わりを著者が考察したものである。また本書は、すでに1944年に「回想の山山」の書名で刊行されたものを追記、改訂したものでもある。

例えば、中国では、文化全般のなかで、山というものの占める地位が、西洋よりずっと重かった。西洋には、道教の聖地のひとつである泰山に匹敵するような文化的意義をもつ山はどこにもない。

では、なぜ山へ関心をよせたのか?

それは山を神と考えていたからである。西洋のオリンポス山のように、山を神々の棲む場所だと想像するのと同時に、山そのものが人間のように生きた神であると信じられていたのである。

その後、西洋では、近代アルピニズムの起源となり、指導精神となった近代自然科学の分野が勃興する。そして山の神秘性が剥ぎ取られ、人間が山の主たらんとする文化が生まれる。近代登山の始まりである。登山記録を集積していくこと。登山ルートを探していくこと。このように山は物となり、自然研究の対象となった経緯が記されている。

また、著者が翻訳したスイス・スキー連盟年報の一部「雪崩と雪」も収録されている。これは雪山を志す人々に若干の示唆を与えるものである。雪の種類と雪崩、乾燥新雪雪崩、湿潤新雪雪崩、底雪崩、雪の比重、雪崩を引き起こす要素、雪の崩落を防止しうる要素、冬期登山家の心得などが語られている。登山のテクニカル的な要素としても参考になる。

登山家は常にパイオニア精神に溢れ、未知の探究によって、自ら新しい道を開く。本書は登山家でもある著者の山への探究心が伝わってくる書である。
そんな美しい気持ちになったような、気がしなくもありません。

積雪期の白根三山北岳。著者が登山にした思い出深い山

北岳山頂の写真。登山の服装に時代を感じる

雪崩が引き起こす結果と、発生後いかに展開するか、それを示した図。A、B、Cでは山の傾斜が異なる

谷では、BよりAのほうが安全なのである

グラン・シャルモの北面。この絶景はデュ・モンセルによって、西欧諸国に広められた

著者がガイドとともに登ったフィンステラールホーン。ガイド料は、当時1日40フラン (C)桑原武夫/平凡社