日本最古の書物はラノベだった? ラノベ風に脳内変換した『古事記』がおもしろい!

文芸・カルチャー

2017/9/18

『ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語』(小野寺優/ KADOKAWA)

 八岐大蛇(やまたのおろち)や因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)などの日本神話を、子どものころに読んだり聞いたりした人は多いだろう。これらはどれも『古事記』のなかのお話だ。

 ストーリーとしては馴染みがあるのに『古事記』と聞くと、途端にハードルが高くなる。たくさんの難しい名前の神様と、そのややこしい関係を把握するだけでも一苦労だ。

 だが、これから紹介する『ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語』(小野寺優/ KADOKAWA)はちょっと違う。個性的な神様の面々がイラストも手伝って、すっと頭の中に入ってくるから不思議だ。448ページという厚さながら、ささっと、本当にあっという間に読めてしまう。

 それは、著者の小野寺優(おのでら ゆう)氏が神様をキャラ付けして、「ラノベみたいに面白おかしく」口語訳した結果なのだが、小野寺氏の「古事記愛」の為せる業でもある。

 WEBデザイナーでもある小野寺氏は2013年に『古事記』に出会うまでは何が書かれているかさえも知らなかったらしい。それが、「まさかこんなにズッポリとハマるとは!!」と本人も思ってなかったようだが、『古事記』が好きすぎて、翌年には現代的に口語訳したサイト「古事記を現代語訳っていうかラノベ風にしてみた」を立ち上げることとなる。すると、「わかり易くて面白い」と口コミが広まり、たちまち人気サイトになった。

 今までいろいろな『古事記』の口語訳が出ているが、小野寺氏のすごいところはラノベ風に現代語訳したところだと思う。そもそも「ラノベ」の大きな特徴の一つは現実離れした内容だろう。さらに、もう一つ特徴を挙げるとすれば、キャラクターを重視しているという点だ。

 一方、『古事記』のなかの出来事も理屈では説明できない現実離れしたものが多く(基本的に神様のお話だから当たり前なのだが)、活躍する神々も現代のラノベの登場人物に負けず劣らず個性的なのだ。だから、『古事記』はキャラが重要視されるラノベの特徴にぴたりと符合する。『古事記』とラノベの共通点に気付いた著者に脱帽だ。

 では、ラノベ風にすると『古事記』はどんな感じになるのか。天岩屋戸(あめのいわやと)に隠れた、アマテラスこと天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、岩戸から顔を出した場面を少しだけ紹介して記事のまとめとしたい。

アマテラスはついに岩戸からぴょっこりと顔を出した。この時を待っていたオモヒカネはタヂカラオに向かって叫ぶ。
「今ですっ!」
「よっしゃっ‼」
 タヂカラオがオモヒカネの合図でアマテラスの手を引っ張る。
「キャッ! タヂカラオ?? 何すんのよっっ!?」
「捕まえたぞ、アマテラス!!」(一部抜粋)

※オモヒカネ=思金神(おもひかねのかみ)、タヂカラオ=天手力男神(あめのたぢからおのかみ)

 実は、この先もおもしろい場面が続くのだが、艶っぽい表現があちこちにちりばめられているので、ここで紹介するのは断念した。ぜひ、続きは本書で確かめてほしい。

文=松本敦子