大好きな彼女の知ってはいけない秘密――計算し尽くされた“衝撃的ラスト”に裏切られる!

文芸・カルチャー

2017/10/4

『きっと嫌われてしまうのに』(松久淳+田中渉/双葉社)

 ラスト、「えっ!?」と思った後にちょっと寒気がして、「でも〇〇って書いてあったから、それはおかしくない?」と読み返して、「あ、だからか……!」と腑に落ちた。
そんな動揺と衝撃が走る『きっと嫌われてしまうのに』(松久淳+田中渉/双葉社)は、二度読み必至の青春ミステリー小説である。

 著者は2004年に映画化もされ話題になった『天国の本屋』や『麻布ハレー』を描いたコンビ作家。今年出版された『麻布ハレー』を読んでいた私は、本作も同じような雰囲気の「ちょっと不思議な恋愛小説」かと思ったのが、いい意味で、期待を大きく裏切られた。

 高校1年生の充(みつる)は、同級生のユキちゃんに一目惚れする。女に手が早いチャラ男の充だったが、ユキちゃんと出会ってからは人が変わったように真面目になる。ユキちゃんを追いかけ回し、周囲からは「ストーカーかよ(笑)」とからかわれるほどだった。

 それでも、「ユキちゃんが好きだ」「守ってあげたい」という熱い想いは抑えきれない。

 充の情熱と偶然が重なり、2人はめでたく付き合うことになる。充は大好きなユキちゃんと過ごす日々を愛おしみ、最高に楽しむが……それは、充の人生を大きく狂わせる序章に過ぎなかったのだ。

 

 ユキちゃんは小さい頃にお母さんが亡くなっている。お父さんはとってもカッコ良くて優しい。職業はゴルフのレッスンプロだ。そんなお父さんと2人暮らしのユキちゃんは、どこにでもいる平凡な女の子。だけど時々、寂しそうな、無気力な表情をする。

 その表情の意味……ユキちゃんの「秘密」が明らかになった時、残酷な現実が高校生を襲う。

 本作は、読者がちょっとした「違和感」を感じながらも、「高校生の青春」を中心に読み進められる物語だ。充とユキちゃんの甘酸っぱい恋模様は、初めて人を好きになった時の初々しさや、もどかしさ、見るもの全てが輝いているような、純粋な感動を思い出させてくれる。

 だが、「違和感」は、ページを重ねるごとに大きくなり、段々と不穏な空気が漂い始める。その「違和感」が、決定的に読者に突き付けられるラストはもちろん衝撃的だったのだが、私はそれまでの、徐々に増幅する「不穏な空気」と、それに「青春」が交り合い、不可思議にマッチしている作品の雰囲気にも大いに惹き込まれた。

 明記はされていないが「実際に起こった歴史的な出来事」も、充とユキちゃんの2人の人生に大きく関わってくる。そういった「事実」を作中に織り交ぜ計算し尽くされた展開が、物語に厚みを持たせ、ラストの衝撃を倍増させていることは間違いないだろう。

「君を守る」――その愛が、狂ってしまった。「愛」は突き詰めたら、悲劇に転じるのかもしれない。いやむしろ、これこそ究極の愛なのかもしれない。そんなことを思った。読んで、驚いて、読み返して、この「愛」に心を惑わされてほしい。

 

文=雨野裾