「港区バブル」がはじけ「足立区」大逆転の時代が到来する……23区のシナリオとは?

社会

2017/11/2

『23区大逆転』(池田利道/NHK出版)

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてカウントダウンが始まった。今、世界が「東京」に注目している。訪日外国人の数は予想を超えて伸び、2017年9月単月でも200万人を超え、2017年1月から9月の総計では2000万人を超える(※)。まずは「日本に来た! 東京だ!」ということが感じられる浅草を観光し、世界最大と言われる渋谷のスクランブル交差点で動画を撮り、新宿で家電量販店とユニクロに足を運ぶ。「カワイイ」発祥の地、原宿・表参道にも行ってみたいし、秋葉原のメイドも見てみたい…「東京」の中には、限られたエリアにギュッと凝縮された個性が詰まっている。

 個性が詰まっているのは観光地ばかりではない。「東京」には23の区があり、これまた非常にユニークである。『23区大逆転』(池田利道/NHK出版)は、『23区格差』の著者であり、23区を中心とするマーケットデータの収集・分析などを手掛けている池田利道氏が、自身のデータをもと に今、東京23区で何が起こっているか、また将来何が起こっていくのかを分析したものだ。

■テーマ別に見る、23区の地殻変動

 観光客とは違い、私たちはこの土地で生活している。そんな私たちの生活に密着した関心事としてとりあげられているのは「産む」「育てる」「住まう」「働く」「老いる」。出生率の高い区、低い区とその特徴、「隠れ待機児童」の問題、試行錯誤の保育サービスについて。また、山の手が抱える空き家・廃屋、タワーマンションの将来的な課題、終の住まい選びについてなど、今、そしてこれからも目を背けることができない問題を、著者ならではの視点で読み解いていく。

■23区総点検!

 セレブ港区が行う自治体間連携の強化、人口増加著しい中央区の小学校不足対策、かつて「子供王国」と呼ばれた江戸川区の再復活への期待、湾岸エリアと内陸部の区内格差がちらつく江東区、犯罪の町から大学の町へと変わろうとしている足立区、東京で最も「昭和」の香りが残る葛飾区、緑被率都内ナンバーワンの練馬区、羽田空港を擁し「下町ボブスレー」などものづくりを振興させる大田区、山の手だが地域力も強い世田谷区、大規模再開発の行方が気になる渋谷区、山の手の中の山の手である目黒区の将来不安、サブカル・アニメに街の未来を託す杉並区・中野区…自分が住んでいる区、働いている区、遊びに行く区の今と未来が見える。

「大逆転」というタイトルとはうらはらに、結論としてどこの区がよくてどの区が悪いのかということは記されていない。著者いわく「考えるのはあなた自身だ」とのこと。人によって住む街に何を求めるかはまちまちだ。メディアによる偏った紹介のされ方でできてしまった固定観念をリセットして、自分にとって正しい街選びをするために、本書は非常に有益な助けとなるだろう。

文=銀 璃子

ベストセラー『23区格差』のレビューはこちら▶港区904万円、足立区323万円…所得水準に大きな格差! 「東京23区の通信簿」を一挙公開!!

(※)日本政府観光局ウェブサイト統計データ推計値より