有名芸能人のお金の遣い方とは? …生き残る芸能人のすごい処世術

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公開日:2017/11/14

『生き残る芸能人のすごい処世術』(城下尊之/ベストセラーズ)

 お金で解決するというと聞こえが良くないのは、おそらく自分が何がしかの被害者となった場合を考えるからだろう。しかし何が起こるか分からないのが世の常で、転んだ拍子に人を突き飛ばして相手に大怪我させてしまうことがあるかもしれず、お金で解決できないと大変なことになる。俗に復讐法と呼ばれるハンムラビ法典の「目には目を、歯に歯を」を引用して復讐を咎める人がいるが、あれは現代でこそ極刑とされる死刑以上の刑罰として、昔はその死体を晒したり鞭打ちにしたりといったものがあり、そのような同等以上の復讐を制限しているんである。しかし、まったく同じ内容による賠償となると、それはそれで社会の安寧に問題があるため、代替としてお金での解決を標準とするようになったのが、近代社会の知恵と工夫ということになる。

 この『生き残る芸能人のすごい処世術』(城下尊之/ベストセラーズ)は、“生き馬の目を抜く”芸能界で活躍する芸能人たちを間近に見てきた著者が、「人心掌握」「危機管理」「気遣い」といった処世術を教えてくれるのだけれど、特に印象に残ったのが大物芸能人や所属事務所のお金の遣い方だった。

 三浦友和に山口百恵との不仲説が出た折には、友和出演の『西部警察』のロケ現場にマスコミが殺到して撮影に支障をきたした。そこへ石原プロモーションの小林正彦専務が現れ、「弁当をたくさん買ってきたから、食べながら待っててくれ」と言ったそうだ。その理由を後に著者が小林専務に尋ねると、「人間、腹いっぱいになって、怒るやつっていないんだよ」と答えたという。また、寒い時期に渡哲也主演の映画を撮影したさいには、焼きそば、カレー、とん汁などをいつでも食べられるように用意し、スタッフが「石焼き芋なんてかじりながら仕事したいよね」と呟いたら、翌日には石焼き芋のトラックを買い付けてきてスタッフ全員ビックリなんてことも。著者は、石焼き芋を買うのではなくトラックごと用意するよう小林専務に助言したのは渡ではないかと推測している。

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 著者が松方弘樹の撮影現場に密着取材したさいのエピソードでは、殺陣師が松方にチャンバラシーンの説明をすると、「うんうん」と頷くだけで稽古もせずに本番を始めたという。もちろん、そんなことができるのは松方が普段から鍛錬をしているからであり、他のシーンの撮影で飛行機のエンジン音が入ったさいには、同じシーンのセリフを別の角度で撮っていたため、それを合わせることでNGにせずスピーディーに撮影が行なわれた。これらは製作費を抑えるためなのだけれど、一方で製作スタッフ全員を集め焼き肉屋を貸し切りにして打ち上げをやっていたそうだ。この打ち上げについて松方の事務所の社長は、「生きた金を使うんだから安いもんだよ」と答えたとか。某巨人の映画の評判が散々だったのは、出演したエキストラがスタッフの態度や食事への不満をSNSに暴露したからとも云われているから、先の石原プロの対応と同様、実に効果的と云えるだろう。

 もちろん本書に載っているのは、お金の話ばかりではない。どうしてあの芸能人が「ご意見番」としてマスコミに取り上げられるのか、何故うるさ型で視聴者に嫌われているイメージの人がテレビ番組に絶えず起用されるのかと思うことがある。だが、例えば野球評論家として知られる野村克也などは、著者がカメラの回っていない時に優勝チームの予想を尋ねたら「戦力的にも巨人が一番」と答えておきながら、本番で同じ質問をすると「ヤクルトに決まっているやないか」と“お怒りモード”で応えたそうで、著者は「感謝の気持ちしかない」と述べている。

 お金を遣うにしても、そこに気遣いが無ければ人の心は動かせない。見返りを求めては下世話になるとはいえ、お金の無い私などは、せめて気遣いだけでもできるようにしたいもんである。

文=清水銀嶺