突然、幼なじみに殺された!? 様々な思いが交差する、ドラマチック青春ミステリー!

マンガ

更新日:2017/12/25

『おくることば』(町田とし子/講談社)

 身近な人間に命を狙われ、殺される。まさか自分がそのターゲットになるなんて、誰も思っていないだろう。何か険悪な関係であったり、恨まれるようなことをしていたりすれば別だが、基本的には身近な人間に対してというのは、見ず知らずの人間に対してより心を許しているはずだ。講談社が刊行している『月刊シリウス』で連載中のコミック作品『おくることば』(町田とし子/講談社)の主人公・佐原もそうだった。でも、“それ”は起こってしまった――。

 ある日の朝、いつもと変わらない登校中に、佐原は大型のトラックに撥ねられて死んだ。突然、幼なじみである同級生の少女・千秋に突き飛ばされたのだ。千秋は一見普通の真面目そうな女の子。佐原も、死ぬまでは自分が千秋に殺されるかもしれないなんて思ってもいなかった。

 しかし死んだことで、佐原はとある女の子と再会する。それは、10年前に交通事故で亡くなった女の子・飛鳥実知だった。佐原は実知と再会したことで、千秋の知らなかった一面を知ることとなる。こうして佐原は、次の犠牲者を出さないために、真実を伝えるために、自らが命を絶たれた事件に立ち向かっていく。

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 この物語は、様々なキャラクターの目線で様々な角度から描かれている。例えば、佐原の幼なじみで同級生のタクは、友達がいない、ヲタクなぼっちだ。彼は佐原がいつも注目されている人気者であることに嫉妬し、彼を呪っていた。そんな佐原が死んで、タクは自分のせいだと思い込んでしまう。そこには、共通の幼なじみである蓮乗への思いも大きく関わっている。そして、前半では一見感じの悪いモブキャラギャルかと思われた女子・メイの行動の真意も、1巻後半で、彼女目線で明かされていく。

「幼なじみ」という、ずっと一緒に過ごしてきた相手だからこその、積もり積もった思い、そして変わるものと変わらないもの。千秋を狂わせたのは、いったい何だったのか――。本作品はまだまだ始まったばかりで、明らかにされていないことが多く謎に満ちている。千秋はいったい何者で、何を企んでいるのか、佐原は、実知は、生きている人間たちに真実を伝えることができるのか。今後の展開が読めないからこそ、気になって仕方がない。これ以上の犠牲が出ないことを願いつつ、佐原や実知、メイの頑張り、事件の真相を見守っていきたい。

文=月乃雫