就職活動、人工知能で私の合否が決まる? 【AI】による採用とは?

ビジネス

2017/12/11

『AI面接#採用』(山崎俊明/東京堂出版)

 人工知能(AI)がSF小説の中だけではなく、現実社会で活躍するようになってきている。とはいえ、実際の生活では実感が持てない人も多いだろう。まだまだ自分には関係ない、と思っているあなた、驚くなかれ。なんと、AIは採用人事にまで侵食を始めているのだ。『AI面接#採用』(山崎俊明/東京堂出版)は、企業の人事部向けに書かれた、AIによる採用活動を勧める一冊。本書から、AI採用とはどのようなものなのかをご紹介したい。

 現在、大手企業の多くは、新卒者向けの採用活動に、インターネットを使ってエントリーシートの提出を求めている。エントリーシートは、2000年頃から行われている採用手段のひとつで、旧帝大や有名私立大の学生だけに会社案内を郵送するのは不公平なのではないか、という疑問のもとに始められたものだ。開始当時は、どんな大学の学生にも平等に就職のチャンスを与えよう、企業側にとっては多様な人材にアタックできるメリットがある、という前向きな謳い文句が世間を躍った。しかし、現在ではエントリーシートの問題点も表面化してきている。そのひとつは、人事部が大量のエントリーシートに目を通さねばならず、じっくりと慎重な吟味ができないことだ。結局は、大学名などの分かりやすい記号でふるいに掛け、優秀な人材を落としている可能性だってあるかもしれない。

 この状況を改善しようと、もうすでにソフトバンクでは2018年4月以降入社分のエントリーシートの審査はAIが行っている。AIで合格基準に達したシートを通過させ、残りを人事担当者がチェックしてから落としているのだとか。ANAでは2018年卒事務職の採用から性格診断アプリケーションを導入、三菱商事では社員のデータベースを学習させたAIを採用に生かすべく研究中だという。

 確かに、採用人事を行う側に立ってみれば、大きな数の中からよりベターな人材を選ぶ助けになるだろう。AIは従来のコンピュータと違って、自分で学習と判断をすることができるので、抽象的な認識も可能。そして、人間以上に大量のデータを扱うのが得意だ。これからますます導入する企業が増えていくことは容易に想像される。また、将来的には、採用人事だけではなく、社内での昇進降格人事にも進出してくるだろう。しかしまだ今のところは、一次面接はAIが行っても、その後の面接はどの社も人間が行うことになっている。AIには、「受験者が社風に一致するかどうか」を判定するのは難しいとされているからだ。

 そうはいっても、受験する側は、採用に使われるAIがどんなものなのかを少しでも知っておき、受験対策をしたいところだ。今後、さまざまな種類の採用AIが出てくると思われるが、ここでは本書に沿ってAI面接官「SHaiN」を、その内のひとつとして取り上げておこう。

 AI面接官「SHaiN」は、受験者の能力を数値化するAIだ。ビジネス上で一般的に求められる資質は、「バイタリティ、イニシアティブ、対人影響力、柔軟性、感受性、自主独立性、計画力、インパクト、理解力、表現力、ストレス耐性」の11項目だとのこと。SHaiNは、これらすべてを数値化するので、企業側は、数値を自分たちの作った採用基準と照らし合わせて合否を決めることになる。SHaiNは、その人の資質データ取得に忠実な設計なので、判断材料が取れるまで辛抱強く質問を繰り返すことが特長だ。

 このように、時代とともに採用現場は変わっていくが、受験者の側は企業がどんな人材を求めているのかをチェックせねばならぬことに変わりはない。一方、企業側は、今までより明確に、求める人材像を数値化する必要があるだろう。どんな人材が欲しいのか、はっきりと定義化して数値に落とし込まなくてはならないのだ。懸念される点を敢えて挙げるとすると、「求める人材(受験側からすれば企業)像とは違ったけれど、長い目で見れば結果よかった」という曖昧さがなくなることだろうか。企業が多様な人を欲してくれて、企業に勤めるということがハイクラスなことにならないような世の中であってほしいと願うばかりだ。

文=奥みんす