40代で出産と子育てを経験。「とある四十路女性」の赤裸々コミック『おんなの窓』最新6巻! 吉田戦車と娘との暮らしに新たな家族も登場

マンガ

公開日:2017/12/9

『おんなの窓』(伊藤理佐/文藝春秋)

 若くはないけど、「おばさん」と言うにはまだ早い。四十路の漫画家伊藤理佐が描くエッセイコミック『おんなの窓』(文藝春秋)の6巻が発売された。

 このシリーズ、もとはといえば三十路バツイチ独身の伊藤理佐が自虐も込めて描く一コマ漫画であった。しかし連載中にまさかの「結婚」。お相手は同じ漫画家である吉田戦車。自虐エッセイとしての色が濃かった作品だけに、果たしてどう続けていくのだろうと思いきや、人はそうそう変わらない。

 伊藤理佐の「妙齢」自虐は健在。それに加えて変わり者の旦那との生活や、四十代になってからの出産、初めて経験する育児など、巻を追うごとに登場人物が増え、話に深みも出て、どんどん面白くなっていく。

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 この作品の魅力は、やはりなんといっても伊藤理佐の観察眼だろう。普段は見逃してしまう些細なことも、伊藤理佐はすくいあげて面白おかしく一コマにまとめてしまう。彼女のカバンを持つ男性を見て「優しいな」とか「重たそう」ではなく、「ああやっぱり女のバックをもってあげる男ってバックしかもってくれなさそう……」と思いを巡らせるのが彼女の面白いところである。

 最新刊の6巻では、冷えとり靴下や怪しい健康法を始めたり、飴を常備したり、遠近両用メガネデビューを果たすなど、どんどんおばさん街道を突っ走っていく姿を見ることができる。

 また、家にやってきた子猫が病気で目が見えないことがわかったとき、慌てふためく吉田戦車とは対照的に強く優しく受け入れる伊藤理佐の姿に、僭越であることは承知の上で彼女自身の成熟も感じられた。変わらない部分ももちながら、着実に大人の階段は上っているのだ。

『おんなの窓』を読んでいると、なんだか不思議と心が軽くなる。それは伊藤理佐が常に等身大の自分であり続け、40代になっても楽そうに変化を受け入れていく姿に勇気をもらえるからだろう。歳を重ねるのも悪くない。そう思える作品だ。

文=園田菜々

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