上司からの「あの件どうなってる?」にどう答えるか?――そこで一流か二流かがバレる!

ビジネス

公開日:2017/12/15

『2軸思考』(木部智之/KADOKAWA)

■「マラソンのどこを走っているか」を考える

 仕事を進めるのが上手な人は、全体像を捉えて仕事をしています。
 フルマラソンを走ろうとするとき、最初の1キロを全速力で走ろうとする人はいませんよね。なぜかというと、目の前にある1キロが42.195キロのうちの「最初の1キロ」だとわかっているからです。

 逆に、目の前の1キロが「最後の1キロ」であれば、残っている自分のすべての力を振り絞って全力で走り切ると思います。
 大切なことは、自分の目の前の1キロが、
・最初の1キロなのか
・中盤の1キロなのか
・最後の1キロなのか
 を知ること。そのために必要なのが「全体像を捉える」ことなのです。仕事もまったく同じです。

 よく、「あの人は重箱の隅ばかりつつくよね」などと言われることがあります。全体のバランスを考えず、些末なことばかりにとらわれていることを揶揄する言葉です。

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 では、そのような人たちはなぜ重箱の隅をつついてしまうのでしょう?
 答えは明らかで、そこが「重箱の隅」であることに気づいていないからです。重箱の全体像がわかっていなければ、自分がつついているところが隅なのか真ん中なのか、把握することができません。

 仕事で重箱の隅をつつくというのは、たとえば資料を作成するときにデザインに凝りすぎ、最も重要なコンテンツが抜け落ちてしまうようなパターン。
 仕事の細部にこだわりすぎて本質を見失うと、必ずヌケやモレが発生します。その結果、一生懸命やっているにもかかわらず、「あの人は仕事ができない」という評価になってしまうのです。

 仕事の全体像を把握していると、何が大切なのか、どこに力を入れるべきなのかがわかります。ですので、仕事の重点の置き方、ペース配分が上手にできるようになります。
 ムダなところでダッシュせず、全力で走るべきところでしっかり走ることができるようになります。

 また、どんな仕事でも使える時間とカネは限られています。どんなにいいアイデアが100個出たとしても、その100個のアイデアを全部実行することはできません。実行するときは、限られた時間とカネで実行できる個に絞る必要が出てきます。
 何を実行し、何を捨てるのか。取捨選択を適切にするためにも、全体感がわかっている必要があるのです。

■上司は全体像を知りたがっている

 全体像を把握していることは、上司への報告でも大切です。
 全体像を示さず、細部ばかりを話す。これが、報告が下手な人の特徴。全体像を示した上で、細部の話に進む。これが、報告上手な人です。

 たとえば、メンバーから「今週は他のものを後回しにして、このタスクに注力したいのですが」と相談されたとします。
 しかし、これだけではOKもNGも出せません。そのタスクがどれくらい重要なのか。いま本当にそのタスクに注力しないといけないのか。他のことも含めた全体像がわからないと指示の出しようがないのです。

「いま、この作業に取り掛かっていますが、再来週の締め切りまでに間に合うペースで進んでいます。先ほど入ってきたタスクは、クライアントが回答を来週頭までに欲しがっているため、優先する必要があると考えます。いま取り掛かっている作業をいったん置き、今週は新しいタスクに注力してもよろしいでしょうか」。
 このように言ってもらえれば、私も「いま取り掛かっている作業はA君に進めてもらって、新しいタスクに専念してください」と判断を下すことができます。

 また、「あの資料、いつまでに作る予定?」と聞くと「すみません。急いで明日出します」と焦って答えてくるような人がいます。
 こちらは、急がせるつもりで聞いたわけではありません。急いでもらいたいときは「あの資料、明日の17時までに作れるかな」というように日時を明示して聞きます。こちらが求めているのはスケジュールの全体像です。

 たとえば「2週間後に完成予定で進めています。いま3日目で、だいたいの構成が出来上がりましたので、週明けくらいには一度ラフな状態で確認いただく予定です」と答えてもらえると、進行の全体像がわかります。
 すると、私としても今後のチェックポイントや自分の空けておくべきスケジュールを考えることができるのです。

 いまでこそこんな話ができますが、私も若手の頃は全体像を示すことの大切さがいまひとつよくわかっていませんでした。

 若手の頃は、会議などで上司から「いま話しているものの総量はいくつなの?」「全体がわからないと判断できないな」といった指摘をよく受けました。
 当時は「なぜそんなことをいちいち確認するのか?」と理解できなかったのですが、自分がリーダーとして大きなチームを率いるいまとなっては、その意味がわかります。

 全体像が示されないと、上司としては判断ができません。上司に報告するときは、全体像を示して判断を仰ぐ。これが、ポイントです。

木部 智之(きべ ともゆき)

日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBM にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝 撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答した。 それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』(いずれもKADOKAWA)がある。