テレビアニメ化でも話題に! “泥クジラ”の民の運命に感動必至『クジラの子らは砂上に歌う』

アニメ・マンガ

2017/12/17

『クジラの子らは砂上に歌う』(秋田書店/ボニータ・コミックス)

 砂の海に浮かぶ船“泥クジラ”を舞台に、そこに住む人々の運命を描く『クジラの子らは砂上に歌う』(秋田書店/ボニータ・コミックス)。本作はその幻想的な世界観で大勢のファンを魅了し、「このマンガがすごい!2015」オンナ編では10位にランクイン。そして現在、待望のテレビアニメが放送され、ファンを歓喜の渦へと巻き込んでいる。

 主人公となるのは、泥クジラに住む少年・チャクロ。泥クジラには“情念動(サイミア)”という超能力を持つ“印(シルシ)”と、それを持たない“無印(むいん)”たちとが協力しあいながら生活しており、チャクロも扱いが下手なもののサイミアを持っている。

 物語はそんなチャクロが砂の海の漂流船で謎の少女・リコスと出会ったことから動き出す。はじめこそ警戒心でいっぱいだったリコスだが、泥クジラに住む人々のやさしさに触れるうちに、次第に心を許すようになっていく。そしてリコスは意を決し、泥クジラを待ち受ける運命について話そうとするのだが、そのとき、謎の艦隊が現れ、泥クジラの民は虐殺されてしまう……。

 どうして彼らは殺されなければならないのか。泥クジラとはいったいなんなのか。リコスはどこからやってきたのか――。本作は実に謎に満ちた物語だが、アニメでは、彼らがその危機、哀しみを乗り越え、新しい世界へ旅立つための「舵」を手に入れるところまで描かれた(12月10日放送の第10話時点)。原作では第5巻までに相当する内容だ。

 その後続く第6巻では、泥クジラとそこに住む人々が背負っている運命が明らかにされる。けれど、彼らは希望を捨てない。必死に明日へと向かおうとするのだ。

 本作では、非常に独特な世界観が描かれている。しかし、それでも読者が置いてけぼりにされないのは、そこにリアリティが滲んでいるからだ。それはなにか。チャクロをはじめとするキャラクターたちの“心の動き”である。仲間の死に直面したときの哀しみ、運命を乗り越えようと抗う姿……。それらを追いかけているうちに、読者はすっかりその世界の住人になってしまう。そして、願わずにはいられなくなる。チャクロたちが心の底から笑えますように、と。

 原作は、現在、第10巻まで刊行されており、最新第11巻は2018年1月16日発売予定。泥クジラの民の運命はどうなっていくのか。一度ハマったら、きっとその世界観から抜け出せなくなるはずだ。

文=五十嵐 大