イクメン以上!? コミックエッセイに学ぶ育児を楽しむ父親になる方法
更新日:2018/2/5

3歳児の親である私は、勤務先のママさんたちから「イクメンだね」という言葉をもらう。
だがその言葉は額面通りには受け取れない。確かに帰宅後の育児ルーチンはこなし、家事も手伝い、土日は妻を休ませるため子供と二人で外出もする。でも正直私にはこう聞こえている…。
「イクメン(なんて男性は少し育児や家事をするだけでイマドキの誉め言葉をもらえているん)だね」
ネガティブすぎる? いや、育児に積極的な父親こそ決して調子に乗るべきではない。妻の精神的な負担の話に耳を傾け、勤務先のママさんたちの苦労を聞けば、イクメンなどというおキレイな言葉は、どう考えても今の日本の育児・家事を含めた家庭生活にそぐわないと思えるはずだ。
ただ私はひそかに楽しんでいる。育児と家事を楽しめている。楽しんでやるなんてとんでもない! 辛さが圧倒的! そんなママたちが多数であることは知っている。だからこれは妻にも言わない私の秘密だ。
ここで自分が育児を楽しんでみたいと思った大きなきっかけを紹介しよう。
それが吉田戦車氏のコミックエッセイ『まんが親』(小学館)だ。
妻(漫画家の伊藤理佐氏)ともども売れっ子として日々忙しい中で娘のにゃーちゃんが生まれ、そして育っていく7年間。男性、父親目線で細々と記録されたにゃーちゃんの成長が独特のおかしみのある間と雰囲気で描かれている。毎日がとにかく楽しそうで、経験してみたいなあと素直に思えた。
生まれたて状態の不安と、忙殺される育児タスクであっという間に過ぎる新生児期。
マンガのネタにする必要もあり、吉田氏はメモをとりまくる。
私も子供が生まれた後、日記帳を買った。自分のことではなく子供のことをできる限りメモするようにした。本当に彼らは生きているだけで発見と面白さの宝庫だ。漫画家ではない私でさえも、これはマンガになるよなあ…といつも思っていた。
妊娠や出産を経て母となる女性と違い、男性は父になった意識が持ちにくいと聞いたとことがある。我々男性は子供と過ごし、得難い経験をつみ上げることで少しずつ、ようやく父親になってきているのだと思う。吉田氏は前妻との間にも娘がおり、心の準備もやるべきことの理解もできていたようだ。
ただ、たとえ2回目の育児であっても、楽しみながらネタ集めをしていても、吉田氏はひとりになりたい、解放されたいと思う。子供を連れて出かけた妻が、写メを送ってくる。すると「夫を見張ってるのか!」とイラついた吉田氏は妻と言い争いになる。だがほどなくして反省し、妻ケアもする。また妻子が里帰りした時に呑みに行って羽をのばしたものの、ふと子供のことを思い号泣することもあった。世の中のママたちからは白い目で見られそうだが、私も育児中にこれらを読んで、たいへん共感した。
もうひとつ私が大きく共感したのは高齢での育児だ。50歳前だった吉田氏が腰を痛めるシーンがある。正直これはつらい…。私がぎっくり腰になった時、身体的な苦痛に加えて育児と家事のルーチンが遂行できないことに落ち込んだ。そして心配してくれつつも明らかに苛立つ妻からのプレッシャーたるや…。
疲れも若い頃よりとれにくくなってきている状態で、夜泣きによる慢性的な睡眠不足が発生。昼間は無尽蔵とも思えるエネルギーを持つ子供に体力を削られる。前述のメンタル面を含めて、父親は母親に比べて本当に弱弱しく情けないのだ。
吉田家には猫との別れ、新たな出会い、再びの別れが訪れる。その後、漫画家の西原理恵子氏から子猫を譲り受ける。猫が早逝し子供が悲しんでいる家の雰囲気を想像すると辛すぎる…。東北出身である吉田氏が東日本大震災後の被災地を見に行き、娘に電話をする描写にも個人的にぐっときた。また伊藤理佐の著作『おかあさんの扉』ではほぼ同時に育児を描いており、これと読み比べるのも楽しい。妻側が育児をする父親をどう見ているかが勉強になる。
子供が生まれる直前に本作を読んで、子供と一緒に話したり、食べたり、遊んだり、成長を見守っていきたいという気持ちが強くなった。こんな風に楽しもうと育児をはじめてみたものの、少なくとも我が家では、私が育児と家事のメインになることは難しい。やればやるほど、ママの域には永久にたどり着かないことにすぐに気づく。子供は育児の分担を理解できず、基本母親に何でもしてほしがる…。
でもどうせたどり着かないのだから、せめて時間をできるだけ使おうと思った。自分の楽しみに使っていた時間を、最大限に育児と家事に投入しようと決意した。吉田氏のようにひとりになりたくもなるけれど、楽しまなくてはもったいないからだ。考えてみれば育児はたった数年だけなのだ。し続けたくても、させてくれなくなるのだ。にゃーちゃんが赤ん坊から幼児であった時期はとてつもなく早く過ぎていったという。
だったら、私もあの数年は辛かったではなく楽しかったと思えるようやりきろう。まんが親のように。
文=小林恭
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