豊かな国家へ更生させようとした革命家の悲願「日本改造法案大綱」

2012/2/23

革命家・北一輝 「日本改造法案大綱」と昭和維新

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:豊田穣 価格:702円

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元海軍軍人で小説家の豊田穣の著。本書は、革命家北一輝と彼が書き遺した「日本改造法案大綱」、その二つが昭和維新へと繋がる経緯と後世での考察を作者が丁寧に語ったものである。

北一輝が書いた日本改造法案大綱は日本でも珍しい国家改造、革命のマニュアルであった。
また北一輝の革命思想はファシズムに見えるが、その根底には民衆救済のための社会主義が土台となっていた。ムッソリーニのように純粋かつ原始的なファシズムとは一線を画している。そして日本改造法案大綱は青年将校達にとって昭和維新の聖典となり、当時の日本のファシズムの新しい原点となっていくのである。

そして昭和維新が起きる。昭和維新とは昭和初期、日本で起きた国家革新のイデオロギーである。そのイデオロギーの具体的な行動では五・一五事件、二・二六事件が挙げられる。

青年将校は救国の熱意に燃え、五・一五事件、二・二六事件のクーデターを決起。日本改造法案大綱を現実のものとし、中国を含むアジア諸国の模範となるような豊かな国家に更生させ、この世から貧困を一掃しようと考えていた。だが北一輝はついに先頭に立ち、日本改造法案大綱を実現する機会はなかった。日本改造法案大綱が幻の革命論と言われる所以である。

カリスマは、彼を崇め、頼りにしている部下や信者に担がれて、事件の首謀者とされることが多い。北一輝の場合も、実際は青年将校が無断に挙兵した。それにも関わらず北一輝は逮捕される。だが北一輝はたとえ無実だとしても、青年将校達は日本改造法案大綱を読んで、民衆のため、国家改造に踏み切った青年将校達の後を追い、自決するつもりだったという。昭和十二年八月十九日。北一輝は、クーデターを実行した青年将校らと同じく銃殺刑に処せられた。五十五歳の生涯だった。

本書では、第一章は二・二六事件のドキュメント。第二章は北一輝の故郷を語る。第三章は日本改造法案大綱の詳細。第四章は北一輝の生い立ち、第五章は昭和初期の動静。第六章は五・一五事件のドキュメント。第七章は北一輝への考察、小論が論じられている。

カリスマは歴史的にみて、注目されやすいが、超現実的、もしくは超論理的であるため、危険な存在だと見られることが多い。だが当時の日本は、カリスマ北一輝の思想に確かに揺れたのである。そして日本は戦後を迎え、革命家北一輝の悲願の書、日本改造法案大綱の骨子は意外にも大日本帝国の敗戦後、占領軍GHQのマッカーサーによって、民主主義とともに実施されることとなるのだった。

興味ある方はぜひ、昭和初期、日本を激動させた思想家の軌跡を本書で知ってほしい。


目次。決起、戒厳令など、現在では想像もつかないキーワード。しかも秩父宮まで

革命家。それが昭和初期、北一輝の肩書きだった

第七章の小論で、逮捕後の北一輝の心境が語られる。彼はその時でも、未来を考えていた

同じく「日本改造法案大綱」の運命が語られる。革命は実現しなかったが、残ったモノが示される (C)Emiko Toyoda 1991