底辺女子が会社を辞めて、雑貨店の経営者になるまで…

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公開日:2018/1/31

『カネなし・運なし・色気なし 底辺女子が会社を辞めて幸せになった話。』(フジコ/大和出版)

 唐突だが、「働く」ことは好きだろうか? つい、「給料上がれ」とか「意味ない会議マジで苦痛」とか「上司ウザイ」とかネガティブなことばかり考えて、だけど「仕事を辞める」のも面倒だし……とりあえず現状維持。

 毎日が不満でいっぱいで、そんな日々から脱け出したいと考えているなら、『カネなし・運なし・色気なし 底辺女子が会社を辞めて幸せになった話。』(フジコ/大和出版)は、あなたに勇気と「きっかけ」を与えてくれるかもしれない。

 著者のフジコさんは現在、奈良で猫雑貨の専門店を経営している。紆余曲折はあったものの、収入も順調。会社員時代と比べると労働時間ははるかに長くなったそうだが、「毎日が好きで溢れ、充実」しているという。

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 そんなフジコさん。元々は「底辺女子」。「生活も何も不安定で低賃金の仕事に就き、家賃や食費などの最低限の生活費にも事欠くような生活を送っている女のこと」だ。

 大学卒業後、フジコさんが就職したのはブラック企業だった。心身ともにボロボロになって退職した後、就職活動をするも上手くいかず。単発のアルバイトを転々とするが、「蟹工船」のようなヤバイ仕事もあったそうだ。それでも「食べていければいいか」ぐらいに考えていたのだが、ある時大病にかかり、「お金がなければ、病気になっても治せない」ということに気づく。

 幸い病気は治ったが、再発するおそれもあり、いつまでもフリーターでいることはできないと、事務員として就職した。とてもよい職場だったそうだが、「毎朝決まった時間に起きて、決まった時間に家を出て、決まった電車に乗る。その繰り返しだけで発狂寸前」だったという。

「仕事はできない。愛想もない。だけど変にプライドが高い中途採用の自分」というコンプレックスに苛まれつつ、イヤイヤ仕事を続ける日々。「仕事に対しても自分に対しても無気力になった」とか。

 しかし、勤めはじめて1年が経ち、ひょんなきっかけから「夢の扉」を開く。

 それは地元の商店街が企画した「新規起業家向けのテナント募集」。初めて商売に挑戦する人のため、格安価格でテナントを貸し、様々なサポートをしてくれるというもの。

 フジコさんは元々、アクセサリーや雑貨作りが趣味で、イベントでの販売経験もあった。だからと言って、お店を持つ気はなかったそうだが、「妄想だけは自由」と、腐女子&夢女として培った妄想力を生かし、「夢ノート」に「こんなお店がいいな」「商品はこんなものを置きたい」などなど、書き連ねていった。

 その妄想力によって夢ノートは5冊目に。出店までの具体的な計画ができており、あとは実行すればいいだけ。ふと、思う。「なんでやらないんだろう」。

 せっかく手に入れた安定した職場を辞めることには葛藤もあったが、「できない言い訳を探して迷っているより、やってみてもしできなかったら、また底辺からやり直したらいいんじゃない?」と、ダメ元で挑戦。

 そして現在、毎日が充実した雑貨店のオーナーとなっている。

 本書は、底辺女子として悩み、苦しみ、大勢の人にサポートされながら、雑貨店の店主となったフジコさんの「経験」と「気づき」が、明るく元気に、笑いも交えながら、エッセイブログのように書かれている。

 現状に不満のある方には、共感できて、一歩を踏み出す勇気になるかもしれない。また、起業までの具体的な道のりも描かれているので、同じくお店を開きたいと考えている方の参考にもなるだろう。

 そして何より、「働く」ことの見方が変わるのではないだろうか。

「怒られない程度に仕事して、毎月決まったお金だけもらえたら最高」という、消極的な考え方をしていた会社員時代の自分をふり返り、フジコさんは語る。

「私のお給料は私ひとりの働きだけではなく、先輩や上司、同僚に後輩、周りのたくさんの人が作ってきてくれた信用や実績から出ていたものでした」と。

 多くの人に守られていた。好きではなかった「集団」や「社会」の中で「生かされていた」ことに気づいたという。

 もし、「働く」ことに対してネガティブにしか考えられなくなっているのなら、フジコさんの「気づき」に触れてみるのはいかがだろうか?

文=雨野裾