やりがいある仕事をしたいと願うすべての人に届けたい、36の実践と心得

ビジネス

公開日:2018/3/2

『逆境のリーダー ビジネスで勝つ36の実践と心得』
(大塚明夫/集英社)

Kites rise highest against the wind, not with it.

「凧が最も高く上がるのは風に流されている時ではなく、向かい風の時である」

 これはイギリスの政治家であるウィンストン・チャーチルの言葉だ。凧だけでなく人も同じ。逆風に向かっていくことで、より高い場所へ上ることができる。

 三井住友信託銀行で副社長を務め、現在は年金業務の顧問である大塚明夫氏。彼は日々、逆風にさらされ、その中で数々の成功を収めてきた。「三井住友」と聞けば、メガバンクに属する大企業のように感じるが、彼が勤めた会社は日本で唯一の独立系信託銀行。つまり、業界内では比較的小規模な組織でありながら、資本力・従業員数に恵まれたメガバンク傘下の大企業を相手に長年戦い、勝利してきたということだ。
 そんな大塚氏が実践してきた仕事に取り組む姿勢や、困難な状況を打ち破ってきた体験談、さらに人を巻き込み、組織を率いるための様々な極意が書かれているのが『逆境のリーダー ビジネスで勝つ36の実践と心得』(大塚明夫/集英社)。現在、リーダーとして先頭に立つビジネスマンはもちろん、いずれリーダーとして活躍したいという若手にもぴったりの本だ。本稿では、誰でも明日から実践できるような仕事術・マインドをいくつか紹介したい。

■リーダーは常に有言実行。しかもプロセスまで宣言する

 野球選手・里崎智也やプロボクサー・亀田興毅、サッカー選手・本田圭佑らは、記者会見の場で「優勝」「勝利」宣言をして、世間を賑わせたことがある。目標を高らかに宣言することで退路を断つ。自分を追い込むことで、最高のパフォーマンスを引き出すこのビッグマウスを仕事で取り入れているのが大塚流だ。

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 しかし、ただ目標を宣言するのではなく、大切なのは周囲にプロセスまで伝えること。失敗は誰も望んでしたいとは思わない。だから、成功までのプロセスを考え抜くことで、同時に「失敗のリスクはどこにあるか」についても真剣に考える。そうすれば、もし失敗してしまっても、後から軌道修正することが可能だ。

 さらに、プロセスに沿って成功することができれば、次に同じようなチャレンジをする時にも同じようなプロセスを踏むことで、成功の可能性を一層高めることができる。そのような“成功の再現性”にも、プロセス付きビッグマウスは一役買ってくれるという。

■「何をやるべきか」を考えられる人材が、いざという時に戦力に

 大塚氏が人材を見極める際に注目するポイントの一つが「何をやるべきか」「何になりたいか」という思考。この二つのうち、どのタイプであるかということだ。

「何をやるべきか」を重視する人は、周りの反対があっても自分が正しいと判断すれば、その考えを実行に移す。「何になりたいか」を優先する人は肩書・収入・他人からの評価を目的に仕事をする人だという。
 要するに、他人の評価が気になりリスクを冒さず失敗を避ける人よりも、リスクがあっても問題解決に挑む人のほうが、いざという時に力になってくれるということだ。

 自分は果たしてどちらのタイプになるだろうか? 仕事に取り組む自分の姿勢を一度見直すきっかけになるだろう。また、一緒に働く同僚がどちらのタイプに属するのか、日頃の仕事ぶりから推察してみるのも、人を見る力を養う訓練になりそうだ。

■お客様のニーズは、アンテナではなくレーダーでキャッチせよ

 ビジネスにおいて大切なのは「顧客のニーズ」に応えること。ニーズに応えられなければ、使えないと見限られてしまうし、応えられれば商品やサービスは売れる。
 大塚氏はアンテナという受け身の姿勢ではなく、こちらからニーズを聞き出す攻めの姿勢、いわば「レーダー」でキャッチすべきだという。そのために、顧客が求めているモノについての仮説を立て、顧客自身がまだ意識していない問題を見抜き、その問題解決策を提案するという流れがマストだ。

 とはいえ、いきなりこれを実践するのは難しい。コツは「変化への感度」を上げて、「徹底的に考える習慣」を身に付けることが大事なのだとか。時間はかかるかもしれないが、ローマは一日にして成らず。まずは、一歩踏み出してみてはどうだろう?
 リーダーは一人。だが、リーダー視点を持ち、場をわきまえ、活躍してくれる部下は何人いてもいい。そして、そんな部下を上司は信頼し、評価してくれるはずだ。今からでも遅くはない。迷えるリーダーも、リーダーを目指す若人も一度本書を手に取ってみてはいかがだろうか。

文=冴島友貴