「単1先輩はもう引退!」 みうらじゅん×いとうせいこうの雑談に思わずクスリ

暮らし

2018/2/14

『雑談藝』(いとうせいこう・みうらじゅん/文藝春秋)

「雑談」がブームだ。書店では、ビジネスパーソン向けのコーナーに「雑談」関連の書籍が数多く並んでいる。契約や折衝、プレゼンなどを始める前に適度な「雑談」で相手との距離を縮め、ビジネスの成果に反映させようというものが多いようだ。

『雑談藝』(いとうせいこう・みうらじゅん/文藝春秋)は、文化放送の「いとうせいこう×みうらじゅんザツダン!」というラジオ番組(2016年1月~2017年5月オンエア)と2016年11月6日に新幹線の車中で録音した音源をもとに書籍化したものだ。冒頭の“ビジネスパーソンの雑談”とはまったく異質のやりとりが延々と続く。

■雑談藝の極意十箇条

「カラス避けCDの話」、「三河安城の話」、「新婚さんの部屋の話」…雑談の内容はさまざまだが、ただ漫然と話しているわけではない。4半世紀に及ぶ著者ふたりの雑談の歴史の中で培った「極意」がある。10ある中からいくつか挙げてみよう。

1.雑談は時と場合によって話を盛ってよし。
3.いいタイミングを計り、相槌を打つことができる「聞き上手」を心がけよう。
4.大切なのは、雑談者同士のピッチが合っているかどうかであり、内容は後からついてくるものなり。
8.何かにたとえる場合、最近の言葉は風化しやすいので、小・中・高の教科書に載っている知識から選ぶべし。
9.「相手も同じことを思ってたんだ」という喜びを感じることこそが雑談の最終目的。お互いに共感できるテーマを探し合おう。

■身近すぎることを掘り下げる

 本書は、100パーセントとりとめのない話で構成されているが、つい夢中になって読んでしまうのには、理由がある。それは、会話のテンポのよさ、少しずつ話のテーマがずれていくことによる広がりを楽しめることに加えて、雑談の内容が私たちの誰もが一度は疑問に思ったことがありながら、掘り下げたことがない身近な内容だからだ。

みうら 単4の「単」っていうのは、そもそも何?
いとう 「単に4ですから!」っていう、ないがしろなイメージなの? 単1はでかいやつだよね?(中略)
みうら 単1って今も売ってることは売ってるんだけど、「ハムかな?」って思うくらいのでかさなんだよ、今の感覚からすると。
いとう 恵方巻きだよね
みうら 単1はそろそろ定年でしょ? でも、電池界の中に「そろそろ引退を…」って単1の首に鈴をつけにいくやつがいないんじゃないかなぁ。「いやー、俺、勘弁してくださいよ。単1さんは先輩ですし、怖いですから」ってなってると思う。
いとう 「今年の紅白からもう卒業ってことで…」みたいなことになってるよね。

 いとう氏とみうら氏、ふたりの関係はもはや会話においては家族を超えているという。笑いを求めて読み進めるも、読後感はじんわりほっこり、親友と呼ぶにふさわしいふたりの関係がとても羨ましくなる。雑談を通して「友達っていいなあ」と感じさせてくれる1冊だ。

文=銀 璃子